荷物を送った側からすると、配送はトラックが倉庫から出発した瞬間に「あとは届くだけ」に見えるかもしれません。しかし物流の現場では、拠点から受取人の玄関先までの最後の区間こそが、時間もコストも最もかかる工程だと言われています。この最終区間で生じるさまざまな非効率は「ラストワンマイル問題」と呼ばれ、EC市場の拡大やドライバー不足を背景に年々深刻さを増しています。本記事ではラストワンマイル問題の定義から発生の背景、業界への影響、そして現場で進む対応策までを整理します。
ラストワンマイル問題とは
ラストワンマイル問題を一言で表すなら、物流拠点から荷物の最終目的地までの配送区間に集中する非効率とコスト増の総称です。区間そのものの距離は短いにもかかわらず、幹線輸送に比べて手間がかかりやすい構造を持っています。
物流業界における定義
物流の工程は、工場や倉庫から地域拠点まで大量の荷物をまとめて運ぶ幹線輸送と、拠点から個々の受取人へ荷物を届ける配送に大きく分かれます。ラストワンマイルは後者の配送部分、なかでも特に受取人に一番近い区間を指す言葉です。幹線輸送は積載効率を上げやすく、1台あたりの配送コストを抑えやすい一方、ラストワンマイルは1件ごとに走行・駐車・荷降ろしが発生するため、同じ距離でも割高になりやすい性質があります。
なぜ「最後の1マイル」が特に難しいのか
都市部では駐車スペースの確保が難しく、住宅街では細い道での切り返しに時間がかかります。マンションではオートロックの解除や管理人とのやり取りも発生し、地方では拠点から受取人までの距離自体が長くなりがちです。さらに受取人が不在であれば再配達が必要になり、同じ荷物に何度も配送リソースを割くことになります。ラストワンマイルが「最後の1マイルほど遠い」と表現されるのは、こうした一件一件の積み重ねが全体の配送効率を大きく左右するためです。
ラストワンマイル問題が深刻化している背景

ラストワンマイル問題は今に始まった課題ではありませんが、ここ数年でその輪郭がはっきりしてきました。背景には荷物量そのものの増加と、運ぶ側の担い手不足という二つの流れがあります。
EC市場の拡大と宅配便個数の増加
国土交通省が公表した令和6年度の宅配便・メール便取扱実績によると、宅配便の取扱個数は約50億3147万個となり、前年度から約0.5パーセント増加しました。ECの利用が生活に定着したことで、個人宅への配送は今後も増える見込みです。荷物1個あたりの単価が下がりやすい個人宅配は、事業所への大口配送に比べて採算が取りにくく、その負担がラストワンマイルに集中しやすい構造になっています。
ドライバー不足と2024年問題
トラックドライバーの時間外労働に上限が設けられたいわゆる2024年問題以降、運送業界では限られた稼働時間でどれだけの荷物を運べるかが一段と重要なテーマになりました。ドライバーの高齢化も進んでおり、担い手を増やすだけでは荷物量の伸びに追いつかない可能性があります。荷物が増える一方で運ぶ人手が伸び悩めば、当然ながら1件あたりの配送にかけられる時間や余裕は減っていきます。
再配達が生む見えないコスト
国土交通省の調査では、令和7年10月時点の宅配便再配達率は約8.3パーセントとされています。前年同月の10.2パーセントからは改善が進んでいるものの、まだ一定の水準にあるのが実情です。国土交通省は令和7年6月に「ラストマイル配送の効率化等に向けた検討会」を設置し、再配達率を12パーセントから6パーセントへ半減させる目標を掲げました。再配達1件そのものの負担は小さく見えても、積み重なれば燃料費や労働時間として無視できない規模になります。この「見えにくいが確実に発生しているコスト」こそ、ラストワンマイル問題の厄介さを象徴しています。
ラストワンマイル問題が運送業界にもたらす影響
ラストワンマイル問題は配送現場だけの話にとどまらず、運送会社の経営や荷主企業の物流戦略にも波及します。
多重下請け構造が運送会社の収益を圧迫する
運送業界では、荷主から仕事を受けた元請けがさらに別の運送会社へ再委託し、それがまた別の会社へと流れていく多重下請けの構造が根強く残っています。二次請け、三次請けと段階を経るごとに中間マージンが差し引かれるため、実際に配送を担うラストワンマイルの現場ほど利益が薄くなりやすいのが実情です。手間のかかる区間ほど収益性が低くなるという逆転現象が、運送会社の経営体力を静かに削っています。
荷主企業側に生まれるリスク
荷主企業から見ると、実際に自社の荷物を運んでいるのがどの会社の、どのドライバーなのかが見えにくいという問題があります。何次請けかによって品質管理や事故対応の体制にばらつきが出ることもあり、配送品質を安定させたい荷主にとっては見過ごせないリスクです。中間業者を挟むほどコストも積み上がるため、直接契約への関心が高まっている背景には、こうした「見えない配送」への不安があります。
現場で進むラストワンマイル問題への対応策

荷物量の増加そのものを止めることは難しいため、業界は「一件あたりの手間を減らす」方向と「担い手同士のつながり方を変える」方向の両輪で対応を進めています。
置き配・宅配ボックスなど受け取り方法の多様化
再配達を減らす取り組みとして広がっているのが、玄関先に荷物を置く置き配や、集合住宅の宅配ボックス、コンビニ・駅の受け取りロッカーの活用です。国土交通省の調査でも、こうした受け取り方法の選択によって再配達率が数パーセント単位で改善する傾向が確認されています。受取人が在宅している必要がなくなる分、ドライバーは一件あたりの滞在時間を短縮でき、限られた稼働時間でより多くの荷物を回せるようになります。
共同配送・シェアリング型の取り組み
同じエリアを複数の運送会社がそれぞれ配送していた状態から、荷物をまとめて一台の車両で運ぶ共同配送への移行も進んでいます。一件あたりの走行距離と台数を減らせるため、燃料コストの削減だけでなく、ドライバー一人あたりの負担軽減にもつながります。荷主企業にとっても、複数の配送手配を一本化できる利点があります。
荷主と運送会社を直接つなぐマッチングの広がり
多重下請け構造そのものを見直す動きとして注目されているのが、荷主企業と運送会社を直接つなぐマッチングサービスです。中間業者を挟まずに契約できれば、運送会社は本来受け取るべき運賃を確保しやすくなり、荷主企業は誰が荷物を運んでいるのかを把握したうえで発注できます。この仕組みは、価格だけでなく信頼関係の面でもラストワンマイル問題への現実的な処方箋になり得ます。
運送会社・荷主企業がラストワンマイル問題にどう向き合うか

制度や業界全体の変化を待つだけでなく、個々の運送会社や荷主企業が今日から動ける部分もあります。
中小運送会社が今日からできること
中小規模の運送会社ほど、営業活動やホームページの整備に十分な時間と費用をかけられないという悩みを抱えがちです。しかし、下請けの立場に甘んじ続けるだけでは、ラストワンマイル問題によるしわ寄せを受け続けることになります。まずは自社の強みや対応エリア、対応可能な車両を整理し、荷主企業に直接届く形で情報発信することが、下請け構造から抜け出す第一歩になります。
荷主企業が運送会社を選ぶときの視点
荷主企業が配送パートナーを選ぶ際は、単純な料金の安さだけでなく、実際に荷物を運ぶ会社が何次請けの立場にあるのかを確認する視点が欠かせません。次のような点を事前に確認しておくと、後々のトラブルを避けやすくなります。
- 実際に配送を担当する運送会社と直接やり取りできるか
- ドライバーの経験や体制について情報が開示されているか
- 労働環境の改善に取り組んでいる会社かどうか
こうした情報が事前に見えているだけで、配送品質やコストの安定度は大きく変わってきます。
ラストワンマイル問題の解決は「ハコプロ」への相談から
ラストワンマイル問題は、荷物量の増加とドライバー不足という構造的な要因が絡み合っているため、一社の努力だけで解消できる課題ではありません。だからこそ、運送会社と荷主企業がそれぞれの立場から一歩を踏み出し、直接つながる仕組みを活用することが現実的な解決策になります。
運送会社検索サイト「ハコプロ」は、株式会社LIGOが運営するサービスで、掲載運送会社数6万件、営業所数8.5万件という規模のデータベースを無料で提供しています。ホームページや営業にかけられる時間が限られる中小運送会社でも、会社の情報や実績を発信し、荷主企業から直接問い合わせを受けられる点が特徴です。なかでも「ドライバー名鑑」は、ドライバーの経歴や配送への想いを可視化する機能で、何次請けかが見えにくいという業界特有の不安に応える工夫のひとつです。実際に北海道のみどり運輸では、ハコプロを通じて荷主企業から直接連絡を受け、一次請けとしての契約交渉につながった事例も報告されています。
ラストワンマイル問題を「仕方のない負担」として受け止め続けるのではなく、荷主企業との関係を見直すきっかけにしてみませんか。自社の配送体制や荷主とのつながり方を見直したい運送会社の方も、信頼できる配送パートナーを探している荷主企業の方も、まずはハコプロへ相談することから始めてみてください。


