運送業における深刻な労働力不足の救世主として女性トラックドライバーを意味する「トラガール」が注目されています。
国土交通省が全日本トラック協会などと連携して発信している「トラガール」には、どのような意図や背景があるのでしょうか。
本記事では、「トラガール」の意味や求められている背景について解説します。国土交通省の「トラガール推進プロジェクト」の概要や、トラガールを目指す方法、その上で認識しておくべき留意点、また運送事業者がトラガール採用と活躍のために必要なことについても掘り下げます。
トラックドライバーに興味のある女性や事業者の皆様は、ぜひ参考にしてください。
トラガールとは

女性トラックドライバーを意味する「トラガール」。
この言葉が生まれたきっかけやトラガールが求められている背景、またトラガールがもつ真の意味合いについて解説しましょう。
トラガール促進プロジェクト
運送業界では、労働力不足が長期間にわたって慢性化しており、少子高齢化が加速する中、
その傾向は深刻さを増す一方です。
その打開策として女性活躍を推進することが不可欠という考えから、国土交通省では、2014年をトラックドライバーの「人材確保・育成元年」とし、官民が連携してトラック業界の活性化に本格的に取り組むことを決めました。
その一環として「トラガール促進プロジェクト」が始動します。
専用サイトを立ち上げ、
- トラガールの魅力
- トラガールのメリット
- トラガールの採用例や活躍の様子
- 現役トラガールのインタビュー
- 企業向けの助成金やトラックガール雇用・育成に役立つ情報
などを積極的に発信しています。
その効果もあり、確実に「トラガール」の認知度は上昇、メディアでも取り上げられる機会が増え、現役トップアイドルを主役にした民放ドラマが放映されるまでになりました。
トラガールが求められる背景
トラックドライバーの有効求人倍率は、長年にわたり2〜3倍前後の値をキープしており、全産業平均の約2倍以上となっています。
つまり、ドライバー希望者1人に対して、常時2〜3件の求人があるという深刻な人手不足が続いているのです。
それに加えて、2024年4月より、トラックドライバーの年間の時間外労働の上限が960時間に規制されることを受け、労働力不足の深刻化はますます加速すると危惧されています(2024年問題)。
国土交通省の調べでは、トラックドライバー人口は、40〜50代半ばがもっとも多くて約45%。一方、29歳以下は10%以下となっています。
平均年齢も全産業平均が43.2歳に対し、大型トラックドライバーは49.4歳となっています。しかもこの平均年齢は年々右肩上がりな傾向を示しており、高齢化が目に見えて加速している状態です。
この現状を打開するために、トラック業界でも女性活躍の推進が求められているのです。
国土交通省のデータでは、女性のトラックドライバーの割合は全体のわずか3%で、全産業平均約43%の10分の1にも満たないのが現状です。
仮にここから全産業平均の半分まで増加したとしても、労働力不足は相当程度解消されると期待できます。
そのメインキャストとして「トラガール」は、極めて強い熱視線を浴びているのです。
「トラガール」の意味合い
「トラガール」という言葉は、その象徴的な響きゆえ、どうしても「ガール=若い女性」とイメージされがちです。しかし実際は、ガールではなく「ウーマン」と称される年代の人たちが少なくありません。中には単に荷物を運ぶだけでなく、支店長として組織を取りまとめている実力者も存在します。
この現状を鑑み、年齢や役職に制約のない、広い概念で女性トラックドライバーを捉える社会的気運を作り上げる必要があるでしょう。
将来的に真の意味で活躍の場が広がるようにするためにも、「トラガール」を軽いニュアンスの言葉として扱わず、国民の生命と財産を守る極めて重要な任務を背負っている存在として敬意を払う姿勢が欠かせません。
ただし、現状から短期間のうちにトラガールを目に見えて増やすのは、現実的とは言えません。男性でもハードな業務を同等のレベルでこなせる女性が、そう次々に現れるとは考えにくいからです。
よって、受け入れ側としては、荷主の協力を得ながら女性がこなせそうな案件を増やす工夫も必要でしょう。そして、トラガールたちの実績が確実に増え、それを見てさらに新たなトラガールが加わり、トラガール向けの案件が増える・・・という好循環が生まれることがトラガールの増加に不可欠と考えられます。
トラガールを目指すには
続いて、トラガールの活躍イメージ、また目指すにあたって意識するべき点や留意点について見ていきましょう。
トラガールの活躍イメージ
トラガールと聞くだけで、未経験の方からすると遠い世界の話のように感じてしまうかもしれません。
しかし実際には、接客業や製造業、介護職、さらに専業主婦などからトラガールに転身して、のびのびと活躍している例も数多くあります。
大事なのは、
- 車の運転が好き
- 中型や大型のトラックに興味がある
- 人にモノを届けることが好き
といった現場特性があるかどうかという点です。
現場以外にも、支店運営や事務方から支えるキャリアパスもあるので、ドライバーがより働きやすい配車プランの策定や作業環境の構築、福利厚生といった制度の整備など、管理特性があるかどうかも活躍の程度を大きく左右するといえるでしょう。
トラガールの難しさ
とはいえ、長期にわたってほぼ男性のみで作り上げられてきた業界のため、女性が仕事をする環境や考え方、受け皿などが極めて希薄であるのが現状です。
したがって、女性活躍が進んでいる他の業界を基準に見てしまうと、トラックドラーバーは、働き方改革が遅れたもっともブラックな職種といっても過言ではありません。
- そもそも女性が少ない
- 女性専用の更衣室がない
- 女性専用のトラックがない
- 仮眠している姿が外から丸見え
- 運転中のトイレに困る
- 生理中の運転や荷降ろしがキツイうえに周囲から理解されない
ざっと挙げてもこのような状況が蔓延しているため、そこに未経験から入っていくのは、かなりの勇気が求められるでしょう。
トラガールが持つべき観点
上記のような現状を踏まえ、これからトラガールを目指す方は、以下のような観点をもって動いていく必要があるでしょう。
- 短時間労働やスポット的な働き方が可能か
- 生理休暇、年次有給休暇が取得しやすいか
- 妊娠・出産時の育児休業制度と再雇用制度があるか
- 女性専用の更衣室やトイレがあるか
- 女性専用トラックがあるか
- 仕事や心身の悩みを相談・解決する環境があるか
加えて、これらの条件を公的に促すことを目的とした「働きやすい職場認証制度」が国土交通省によって設けられています。
具体的には、「一般財団法人日本海事協会」が、国土交通省から認証実施機関として指定され、運送業者からの申請受付および審査、認証等の手続きを実施しています。
認証レベルは、以下の3段階に分かれています。
- 1つ星認証マーク・・・法令を遵守し、労働条件や労働環境改善に向けた取り組みを一定程度実施している
- 2つ星認証マーク・・・法令を遵守し、労働条件や労働環境改善に向けた取り組みを相当程度実施している
- 3つ星認証マーク・・・法令を遵守し、労働条件や労働環境改善に向けた取り組みを十分に実施している
トラガールを目指す際には、これらの認証を受けているかどうかも判断基準にするべきでしょう。
運送会社の経営者がトラガールの採用・活躍を目指すには

運送会社の経営者としては、2024年以降の物流危機を乗り越えて確実な成長と発展を実現するために、トラガールを味方につけない手はありません。
そこで、続いては、トラガールを採用することによる効果や活躍の場を与える前提、さらに実際にトラガールが活躍する運送会社を紹介しましょう。
トラガール活躍の効果
トラガールが活躍すると以下のような効果が期待できます。
- 企業イメージの向上・・・女性ならではの気遣いやソフトな対応が企業イメージ向上に繋がります。
- 社員間のコミュニケーションの円滑化・・・女性はコミュニケーション能力に長けた人が多く、社内の会話が増え、場が明るくなるので、中高年の男性ドライバーにとっても働きやすさが促進されます。
- 顧客接点が強くなることによる営業力の向上・・・荷主をはじめとするお客様への対応が丁寧で好感を持たれることにより、業績アップが期待できます。女性ならではの視点で新たな提案がされることによってさらに顧客満足度が向上することもあるでしょう。
- ドライバー不足の解消・・・トラガールが増えれば、労働力不足解消に寄与し、女性の働きやすい環境が整備されれば、さらにトラガールが増えるという好循環が期待できます。労働衛生が整えば、それを受けて性別に関係なく若手ドライバーが増加する効果も見込めるでしょう。
トラガール活躍の前提
トラガールが活躍するには、以下のような前提条件を整備する必要があります。
- 安全管理の配慮・・・オートマ車の増加、バックモニターやライブレコーダーの装備、アルコールチェックの徹底、丁寧な安全講習や研修制度
- 女性が働きやすい制度や環境の整備・・・女性専用車の導入、運転窓に目隠しカーテンの装着、キャビン内の収納スペースの増設、育児休暇制度や生理休暇・再雇用制度の整備、女性専用トイレと更衣室の設置、コミュニケーションスペースの設置
- 持続可能性の高い職場環境作り・・・公正かつ公平な給与体系、昇給・昇進制度の向上、短時間労働制の導入など多様な勤務体系の整備、風通しの良い職場環境作り
「仕事を与えてやる」「雇ってあげる」といった上から目線の考え方では、将来性や才能に富んだ、自社の戦力となりうる質の高い女性に選ばれる企業には到底なり得ません。経営トップが自ら女性活躍推進の旗印を掲げ、トラガールを積極的に受け入れる姿勢と環境作りに本気で取り組むことが何より大切でしょう。
国土交通省が公表している「若年層・女性ドライバー就労育成・定着化に関するガイドライン 〜魅力的なトラック運送業界への進展〜」や全日本トラック協会と連名で公表している「ドライバー不足の対策していますか? 〜トラック運送業の人材採用に向けて〜」などを参考にして、早急に社内改革に取り組むことをおすすめします。
ただ、上記のことをすべて不足なく実施するのは、かなりの負担が強いられるでしょう。
厚生労働省では、
- 「両立支援等助成金」
- 「トライアル雇用奨励金」
- 「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金」
- 「人材開発支援助成金」
- 「キャリアアップ助成金」
- 「受動喫煙防止対策助成金」
といった各種助成金制度によって経営者支援を行っています。
これらも積極的に活用していくと、社内改革が推進しやすくなるでしょう。
トラガールが活躍する運送会社
トラガールが実際に活躍する運送会社をご紹介しましょう。
【長崎市 丸野株式会社】
大正15年創業の老舗運送会社で、経営理念に「社員の幸福」が謳われています。
トラガールを積極的に採用・育成しており、現役のトラガールからは、
- 資格免許取得助成制度でスキルアップを応援してくれるのが嬉しい
- 男女関係なく頑張る人にチャンスをくれる
- 男性並の給料がもらえる
- 大変な荷降ろしは男性がサポートしてくれる
- 頼れる上司が親身になって助けてくれる
といった声が聞かれます。
【広島市 株式会社 脇地運送】
昭和21年創業で、広島や岡山を中心に手広く展開する運送会社です。
トラガールの積極採用と育成に取り組んでおり、
- トラガールに加えて女性の作業スタッフ・内勤スタッフの雇用を行っている
- 働く時間帯や曜日の調整・産後の復帰制度を整備
- 能力や適性に合わせて、小型配送から大型ドライバーまでさまざまな業務を割り振っている
- 普通免許で運転できる2トン箱車やオートマ車を導入済み
トラガールの活躍により、顧客からは「女性ドライバーさんが納品に来ると、雰囲気が明るくていいね! 荷扱いも丁寧で検品も確実」という高い評価をもらっているそうです。
現役のトラガールからも、
- 入社後に自動車教習所でトラック運転の練習をさせてもらい、1ヶ月の同乗研修もあって自信につながった
- 初めてで不安だったものの、1日体験制度を受けて安心して入社できた
- いろんな人たちが気さくに明るく声をかけてくれるので心の支えになる
といった声があります。
まとめ
人手不足が深刻化する運送業界において、女性トラックドライバーの比率は極めて低いため、物流危機を回避するためにも、これから本格的に女性活躍を推進していく必要があります。
女性が活躍しているということは、
- 働きやすい
- 社内が明るい
- 安心して働ける
- 仕事が楽しい
という労働環境が整備されている証になるため、市場価値は確実に高まると見てよいでしょう。
LIGOでは、女性が活躍している運送会社をハコプロを通じて積極的にPRしてまいります。
また女性活躍を推進する運送会社の採用支援にも前向きに取り組み、ホワイトで魅力あふれる運送業界の構築に貢献することを強く望んでいます。
これからトラガールの採用に向けて動いて行こうとお考えの経営者の皆様は、ぜひ当社までお気軽にお声がけください。


