MENU

フィジカルインターネットとは|物流の未来を変える仕組みと動向

  • URLをコピーしました!

「フィジカルインターネットという言葉を聞いたことはあるものの、具体的に何を指すのか、自社の仕事とどう関わるのかがはっきりしない」という運送会社の担当者や荷主企業の物流担当者は少なくありません。物流業界ではドライバー不足やEC市場の拡大により、従来の輸送網だけでは荷物を運びきれなくなる懸念が広がっています。フィジカルインターネットは、この構造的な課題に対する一つの答えとして、経済産業省をはじめとする官民の議論の中心に置かれてきた概念です。本記事では、フィジカルインターネットの基本的な考え方から注目される背景、実現に向けた国の動き、そして運送会社や荷主企業が今から取り組める準備までを、実務に近い視点で整理します。

目次

フィジカルインターネットとは何か

フィジカルインターネットとは、荷物という「もの」の輸送を、情報通信インターネットにおけるデータ通信の仕組みになぞらえて設計し直そうという構想です。英語表記のPhysical Internetを略してPI、あるいはギリシャ文字のπ(パイ)で表されることもあります。企業ごとに個別最適化されてきたトラックや倉庫を、業界の垣根を越えて共有し、荷物をより効率よく運べる状態を目指す点が特徴といえます。

従来の物流ネットワークとの違い

従来の物流は、荷主企業と運送会社が個別に契約を結び、専用のトラックや倉庫を確保して荷物を運ぶ形が主流でした。この方式は取引先との関係が明確である一方、積載率が低いまま走るトラックが発生しやすく、繁忙期には車両が足りず、閑散期には空車が生まれるという偏りも起きがちです。フィジカルインターネットは、こうした個別最適の積み重ねではなく、複数の企業が持つ輸送資源やルートを共有し、必要なときに必要な分だけ組み合わせて使う発想に立っています。

名称の由来とπ(パイ)という記号

インターネットでは、送信されたデータが複数のサーバーを経由しながら、送り主と受け取り主の間を結んでいます。データを送る側は、途中でどのサーバーを通っているかを意識する必要がありません。フィジカルインターネットは、このデータの代わりに実際の荷物を、標準化された容器に載せて複数の物流拠点を経由させる仕組みとして構想されています。名称に込められた発想自体はシンプルですが、実現するためには容器の規格やシステムの共通化など、乗り越えるべき論点が数多く残っています。

フィジカルインターネットが注目される背景

物流倉庫とトラック

フィジカルインターネットが政策議論の中心に据えられるようになった背景には、物流業界が直面するいくつかの構造的な問題があります。単なる技術トレンドとしてではなく、放置すれば物流そのものが立ち行かなくなるという危機感が根底にある点を押さえておく必要があります。

ドライバー不足という構造的な問題

トラックドライバーの高齢化と担い手不足は、以前から指摘されてきた課題です。時間外労働の上限規制が適用されたことで、一人あたりが運べる距離や時間には物理的な制約が生まれました。荷主企業と運送会社が個別に非効率な輸送を続けている限り、限られたドライバーの労働時間はさらに圧迫されることになります。フィジカルインターネットが目指す共同輸送や積み合わせは、この労働力の制約に対する現実的な対応策の一つとして位置づけられています。

EC市場の拡大と再配達の負荷

EC市場の拡大に伴い、小口貨物の配送件数は年々増加しています。宅配便の取扱個数が増える一方で、不在による再配達は現場の負担を大きくしてきました。荷物を届ける経路や積載を最適化できれば、再配達を含めた配送回数そのものを減らせる可能性があります。フィジカルインターネットの発想は、個々の企業が抱える配送網を統合的に捉え直すことで、この負荷を軽減する方向性を示すものです。

CO2削減という社会的要請

輸送部門におけるCO2排出量の削減は、企業単体の努力だけでは限界があります。積載率の低いトラックが道路を走る状態が続けば、運ぶ荷物の量に対して排出される温室効果ガスの比率は高いままでしょう。複数企業の荷物を組み合わせて積載効率を高めることは、環境面での要請に応えるための現実的な手段としても評価されています。

経済産業省が描く実現までの道のり

フィジカルインターネットは、民間企業の自発的な取り組みだけで広がるものではなく、経済産業省や国土交通省を中心とした官民の議論を通じて、段階的に構想が具体化されてきました。政策としての位置づけを理解しておくと、自社がいつ、どの程度の対応を求められるのかを見通しやすくなります。

フィジカルインターネット実現会議の議論

経済産業省は「フィジカルインターネット実現会議」を設け、荷主企業、物流事業者、有識者を交えた議論を重ねてきました。会議では、実務に直結する複数のテーマについて検討が進められています。

  • 輸送容器やパレットの標準化
  • 情報システムの共通仕様の整備
  • 業界横断で協調すべき領域と競争すべき領域の線引き

経済産業省が公表してきた資料では、対策を取らなかった場合、2030年には物流需要の一部が輸送されないまま取りこぼされ、その規模は数兆円に上る可能性があるとされています。

2040年に向けたロードマップの考え方

フィジカルインターネットの実現時期については、2040年ごろを一つの目安とするロードマップが示されてきました。すぐに業界全体が切り替わるわけではなく、まずは特定の地域や品目で共同輸送の実証を重ね、標準化された仕組みを少しずつ広げていく段階的なアプローチが想定されています。一般社団法人フィジカルインターネットセンターのような組織も設立され、企業間の情報共有や実証実験の橋渡し役を担っているのが現状です。

フィジカルインターネットが実現した場合に期待できる効果

荷物を積んだトラックの荷台

フィジカルインターネットが目指す仕組みが広がった場合、荷主企業と運送会社の双方にとって、どのような変化が起こりうるのかを整理しておきます。理念だけでなく、実務にどう跳ね返るのかを具体的にイメージすることが、準備を進めるうえでの出発点になるはずです。

積載効率の向上とコスト構造の変化

複数の荷主の貨物を組み合わせて積載できれば、一台あたりのトラックが運ぶ荷物の量は増え、走行距離あたりのコストは下がりやすくなります。燃料費や人件費が上昇を続ける中で、積載効率の改善は数少ない現実的なコスト対策の一つです。荷主企業にとっても、単独では確保しにくかった輸送力を、共同輸送という形で補完できる可能性が広がります。

中小規模の運送会社にとっての機会

フィジカルインターネットと聞くと、大手物流企業だけの話だと感じるかもしれません。ですが、標準化された仕組みが整えば、車両台数の少ない中小規模の運送会社でも、特定の区間やルートを担う形で共同輸送の一翼を担いやすくなります。むしろ、地域に密着した輸送力や、特定の荷姿への対応力を持つ運送会社ほど、大手にはない役割を果たせる場面が増えると考えられます。

実現に向けた課題

フィジカルインターネットの構想には現実的な効果が期待される一方、実現までにはいくつもの壁が存在します。理想論として語るだけでなく、どこに難しさがあるのかを押さえておくことが、今後の動向を冷静に見極めるうえで欠かせません。

規格・標準化の壁

荷物を積み合わせるためには、輸送容器やパレットのサイズ、データのやり取りに使うシステムの仕様など、業界横断での標準化が前提になります。企業ごとに異なる規格を使い続けている限り、他社の荷物と組み合わせることは技術的に難しいままです。標準化には業界団体や行政を交えた合意形成が必要で、時間のかかる作業になるでしょう。

情報開示への心理的なハードル

フィジカルインターネットでは、どの企業がどれだけの荷物を、いつ、どの区間で運んでいるかという情報を、ある程度まで共有する必要があります。荷主企業からすれば、取引の詳細を他社と共有することへの抵抗感は根強く残っています。運送会社にとっても、自社の車両の稼働状況を外部に見せることへの不安があるかもしれません。こうした情報開示への心理的なハードルを下げていくことが、標準化と並ぶもう一つの課題です。

運送会社や荷主企業が今からできる準備

フィジカルインターネットの全面的な実現は、まだ先の話に見えるかもしれません。ですが、その方向性を先取りするような取り組みは、すでに現場レベルで始められます。大きな仕組みの完成を待つのではなく、今できることから着手する視点が重要です。

荷主との直接契約による関係の可視化

多重下請け構造が残る運送業界では、実際に荷物を運んでいる会社が誰なのか、荷主企業からは見えにくいという問題があります。荷主企業と運送会社が直接つながり、契約関係を明確にしておくことは、フィジカルインターネットが前提とする「誰が、どの区間を担っているか」を可視化する土台にもなります。中間業者を経由する取引を減らし、直接のやり取りを増やすことは、将来の共同輸送への対応力を高める準備にもつながるはずです。

自社の強みや実績を発信する取り組み

共同輸送の枠組みに参加するかどうかにかかわらず、自社がどの地域に強く、どの車両形状に対応できるのか、ドライバーがどのような姿勢で仕事に向き合っているのかといった情報を、外部に向けて発信しておくことには意味があります。荷主企業が運送会社を選ぶ際の判断材料が増えるほど、直接契約につながる機会も広がりやすくなります。

フィジカルインターネット時代を見据えた物流パートナー選び

フィジカルインターネットは、遠い未来の理想像ではなく、ドライバー不足やコスト上昇という足元の課題に対する、一つの現実的な処方箋として議論が進められてきました。標準化や情報共有といった課題は残るものの、荷主企業と運送会社が直接つながり、互いの実態を可視化していく流れそのものは、すでに始まっています。

ハコプロは、掲載運送会社数6万件超、営業所数8.5万件超のデータベースを持つ運送会社検索サービスとして、荷主企業と運送会社の直接契約を後押ししてきました。ドライバーの経歴や仕事への想いを掲載する「ドライバー名鑑」など、誰が荷物を運んでいるのかを可視化する機能は、フィジカルインターネットが目指す透明性のある物流とも重なる部分があります。共同輸送の担い手を探している荷主企業も、地域や車両形状を武器に新しい取引先を広げたい運送会社も、まずは一度ハコプロで自社に合う相手を探してみてはいかがでしょうか。

ハコプロとは?(荷主様向け)

ハコプロとは?(運送会社向け)

お問い合わせはこちらから

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次