24時間労働とは何を指すのか
「24時間労働」という言葉は、実は労働基準法のどこにも定義が置かれていません。警備員の隔日勤務、病院や工場の交代制、長距離を走るトラック運転手の拘束時間など、24時間という枠組みで働く形態をまとめて指す通称として使われています。そのため、同じ「24時間労働」という言葉でも、現場によって中身がまったく異なる場合があります。
この記事では、24時間労働と呼ばれる働き方を法律上どう位置づければよいのか、どこからが違法になるのかを整理します。あわせて、長時間の拘束が生じやすい運送業の現場に焦点を当て、実務上の注意点も紹介します。自社のシフト運用に不安がある方や、これから24時間体制の職場で働く予定の方は、判断材料として参考にしてください。
隔日勤務としての24時間労働
もっとも典型的な24時間労働は、警備員や施設管理の現場でみられる隔日勤務です。1回の勤務でおよそ24時間を通して働き、翌日を「明け」として休み、その次に法定休日が回ってくるというサイクルを繰り返します。1回の勤務で2日分の労働を前倒しでこなすようなイメージに近いといえます。
この働き方が成立するのは、労働基準法に定められた変形労働時間制を活用しているためです。1日単位でみれば法定労働時間の8時間を大きく超えますが、一定期間で平均した労働時間が法律の枠内に収まるよう設計されていれば、適法な勤務体系として運用できます。
交代制勤務としての24時間労働
もう一つのパターンが、病院や工場、コールセンターなどで採用される交代制です。こちらは1人が24時間ぶっ通しで働くわけではなく、複数の担当者が2交代や3交代でバトンをつなぎ、職場全体として24時間の稼働を維持する仕組みです。個々の勤務時間は8時間前後に収まることが多く、隔日勤務とは負担の性質が異なります。
同じ「24時間体制の職場」でも、隔日勤務のように1人に長時間の拘束が集中するのか、交代制のように負担が分散されるのかで、健康管理の考え方も変わってきます。求人票やシフト表を確認する際は、どちらの型に近いのかをまず見極めることが欠かせません。
24時間労働は労働基準法上どこまで認められるか

結論からいえば、24時間労働そのものは違法ではありません。ただし、無条件に許されているわけでもなく、いくつかの手続きと歯止めがあって初めて適法になります。ここでは、判断の軸となる3つの制度を順番に確認していきます。
法定労働時間と36協定
労働基準法では、労働時間は原則として1日8時間、週40時間までと定められています。これを超えて働かせる場合、会社は労働者との間で時間外労働に関する労使協定、いわゆる36協定を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません。36協定を結ばずに法定時間を超えて働かせれば、それだけで法律違反となります。
36協定を結んでいても無制限に残業させられるわけではなく、時間外労働は原則として月45時間、年360時間が上限です。臨時的な特別条項を付けた場合でも、年720時間や複数月平均80時間といった上限があり、これを超えると罰則の対象になります。24時間労働を運用する会社では、この上限管理がとりわけ重要になります。
変形労働時間制による運用
先述の隔日勤務は、1カ月単位や1年単位の変形労働時間制を採用することで成立しています。この制度は、繁閑や勤務パターンに合わせて労働時間を弾力的に配分し、対象期間を平均した際に週の法定労働時間を超えなければよいという考え方に基づきます。1日24時間という長い勤務も、この枠組みの中で法定内労働として扱われる余地があります。
ただし、変形労働時間制を導入するには就業規則への規定や労使協定の締結など、所定の手続きを踏む必要があります。手続きを踏まずに独自の解釈で長時間シフトを組んでいる場合、それは変形労働時間制ではなく、単なる法定時間外労働として扱われる可能性が高いです。
仮眠時間・待機時間の労働時間該当性
24時間労働をめぐる争いで最も多いのが、仮眠時間や待機時間が労働時間に当たるかどうかという論点です。単に横になって休んでいるだけであれば休憩時間として扱われますが、電話や来客への対応義務が課され、実質的に会社の指揮命令下に置かれている状態であれば、判例上は労働時間と評価されます。
この判断は「その時間を労働者が自由に使えるかどうか」がポイントになります。仮眠室にいても緊急対応が義務づけられていれば自由利用とはいえず、賃金の支払い対象になり得ます。会社側がこの点を曖昧にしたまま無給扱いにしていると、後から未払い賃金として請求される火種になりかねません。
24時間労働が違法と判断されるケース
制度としては適法でも、運用の仕方によって違法状態に転じるのが24時間労働の難しいところです。ここでは、実際にトラブルへ発展しやすい3つのパターンを取り上げます。
割増賃金が適正に支払われていない
法定労働時間を超えた時間外労働には25%以上、深夜(午後10時から午前5時)には25%以上、法定休日労働には35%以上の割増賃金を支払う義務があります。24時間労働では深夜帯にまたがる勤務が必ず発生するため、割増計算を怠ると未払い賃金の問題に直結します。「隔日勤務だから固定給に含まれている」という説明だけで済ませている会社は、計算根拠を一度見直したほうが安全です。
36協定の上限を超えて働かせている
人手不足を理由にシフトの穴を特定の従業員で埋め続けた結果、36協定の上限を超えてしまうケースも少なくありません。上限超過は経営側の意図とは関係なく、実際の労働時間が基準を上回っていれば違反となります。慢性的な人員不足を残業でカバーする運用は、いずれ限界を迎えます。
安全配慮義務を怠っている
会社には、労働者が安全で健康に働けるよう配慮する義務があります。連続勤務による過労で健康被害が生じた場合、労働時間の管理だけでなく、休息の確保や体調不良時の対応が不十分だったとして安全配慮義務違反を問われることがあります。長時間労働そのものへの規制と、健康確保のための配慮義務は、法律上は別の切り口である点も押さえておきましょう。
運送業における24時間体制とドライバーの拘束時間管理

運送業は、24時間労働という言葉が最も切実に語られる業界のひとつです。長距離輸送では深夜から早朝にかけて走行し、荷待ちや荷役作業で拘束時間が延びやすく、警備員のような明確な隔日勤務ではないものの、体感としては24時間労働に近い働き方になりがちです。ここでは、ドライバーの労働時間を管理するうえで欠かせない仕組みを見ていきます。
拘束時間と休息期間のルール
トラック運転者には、労働基準法に加えて「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」という個別のルールが適用されます。2024年4月の改正では、1日の拘束時間は原則として13時間以内、上限は15時間まで(14時間を超える回数は週2回が目安)とされ、勤務と勤務の間には継続9時間を下回らない休息期間を確保することが求められています。
この基準は、いわゆる物流の2024年問題への対応として拘束時間の上限が厳格化された経緯があります。ドライバー本人はもちろん、荷主企業や配車を担う運行管理者も、この枠組みを踏まえて配送計画を組む必要があります。労働時間や休憩に関するより詳しい制度は厚生労働省の労働基準関連ページでも確認できます。
多重下請け構造と長時間労働の温床
運送業では、元請けから2次、3次、時にはそれ以上の下請けへと業務が流れる多重下請け構造が根強く残っています。中間に入る会社が増えるほど運賃の取り分は目減りし、現場のドライバーには荷待ちや長距離走行のしわ寄せが集中しやすくなります。これが24時間労働に近い働き方を生み出す構造的な要因のひとつです。
この課題に対しては、荷主企業と運送会社が中間業者を介さず直接契約を結ぶ動きが広がりつつあります。運送会社検索サイト「ハコプロ」を運営する株式会社LIGO(リーゴ)では、掲載運送会社数約6万件、営業所数約8.5万件というデータベースをもとに、荷主企業と運送会社の直接契約を促進しています。掲載は運送会社側が完全無料で利用でき、ドライバーの年齢や社歴を紹介する「ドライバー名鑑」機能によって、荷主企業が「誰が荷物を運ぶのか」を事前に把握できる仕組みも用意されています。中間マージンを減らし、ホワイト物流の実現に取り組む会社を可視化する「ホワイト物流認定マーク」も特徴のひとつです。
勤務間インターバル制度で疲労回復の時間を確保する
24時間労働の負担を和らげるために近年注目されているのが、勤務終了から次の勤務開始までに一定の休息時間を空ける勤務間インターバル制度です。長時間の拘束が避けられない業種ほど、この制度の考え方を取り入れる意味は大きくなります。
推奨されるインターバル時間の目安
2019年の働き方改革関連法により、勤務間インターバル制度の導入は事業主の努力義務とされました。国のガイドラインでは11時間以上のインターバル確保が目安として示されており、これは睡眠時間と通勤時間、生活時間を合わせて考えたときに、翌日の勤務へ支障なく臨める最低限のラインとされています。
努力義務であるため罰則はありませんが、導入企業が着実に増えている背景には、疲労蓄積による事故やミスを防ぎたいという現場側の切実な事情があります。24時間労働のように拘束が長い勤務ほど、インターバルの確保は形式的な数字合わせではなく、実際の休養につながっているかを点検する必要があります。
運送業界での導入状況
運送業では、先ほど触れた改善基準告示のなかで継続9時間以上の休息期間が明文化されており、勤務間インターバルの考え方がすでに制度として組み込まれています。とはいえ、荷待ち時間の発生や急な配車変更によって、実際の休息が想定より短くなる現場もあります。運行管理の段階でインターバルを前提としたスケジュールを組めるかどうかが、現場の負担を左右する分かれ目になります。
24時間労働に関するよくある質問
ここまでの内容を踏まえ、24時間労働について特に質問が寄せられやすい3つのポイントに答えます。
Q. 24時間労働と24時間勤務は同じ意味ですか
現場では、ほぼ同じ意味の通称として使われていることが多いです。ただし厳密には、警備員などの隔日勤務を指して「24時間勤務」と呼ぶ場面が多く、「24時間労働」はより広く、交代制や運送業の長時間拘束まで含めた総称として使われる傾向があります。求人や社内文書でこの言葉を見かけたら、指しているのがどちらの働き方かを個別に確認するのが確実です。
Q. 仮眠時間中の呼び出し対応は労働時間になりますか
仮眠中であっても、呼び出しがあれば応じなければならない義務がある場合は、原則として労働時間に含まれます。逆に、呼び出しの可能性がまったくなく、完全に自由に過ごせる仮眠時間であれば休憩として扱われることもあります。判断が分かれやすい部分なので、実際の運用実態がどちらに近いかを会社と労働者の双方で確認しておくことが大切です。
Q. 運送会社は24時間体制をどう管理すればよいですか
まずは改善基準告示に沿って拘束時間と休息期間を数値で管理し、荷待ち時間まで含めた実態を可視化することが出発点になります。そのうえで、多重下請けによる無理なスケジュールを避けるには、荷主企業との直接契約を増やす経路を持っておくことも有効です。前述のハコプロのように、運送会社の情報を無料で公開し、荷主企業と直接つながれる仕組みを活用する会社も増えています。
まとめ|適正な24時間労働の運用とハコブログへの相談
24時間労働は、それ自体が違法な働き方ではありません。変形労働時間制や36協定といった制度に則り、仮眠時間や待機時間の扱いを適切に整理し、割増賃金と安全配慮を欠かさない限りにおいて、法律上も認められる働き方です。逆にいえば、これらのどれか一つでも欠けた瞬間に、違法な長時間労働へと転じてしまう危うさも持ち合わせています。
とりわけ運送業では、改善基準告示による拘束時間の管理に加えて、多重下請け構造そのものを見直す視点が欠かせません。荷主企業との直接契約を進め、ドライバーの働き方を可視化していくことは、24時間労働に近い過度な負担を減らす有効な手段になります。自社の運送体制や取引先選びについて相談したい方は、運送会社検索サイト「ハコプロ」を運営するハコブログまでお気軽にお問い合わせください。


