多重請負とは何を指す言葉か

「多重請負」という言葉で検索する方の多くは、自社が受けている仕事の発注元をたどると何社もの会社を経由していることに気づき、この状態が普通なのか気になって調べているのではないでしょうか。多重請負とは、発注者から仕事を請け負った会社が、さらにその仕事の一部または全部を別の会社に発注し、その会社がまた次の会社に発注するという流れが何段階にもわたって連なっている状態を指します。契約自体は請負契約という一対一の関係の連続にすぎませんが、全体を俯瞰するとピラミッド状に会社が積み重なった構造になっている点が特徴です。IT業界や建設業界の文脈で語られることが多い言葉ですが、実は運送業界にも同じ構造が根強く残っています。
元請け・下請け・孫請けの関係
最初に仕事を受注する会社は「元請け」または「一次請け」と呼ばれ、発注者に対して仕事全体の責任を負う立場になります。元請けから仕事の一部を任される会社は「下請け」または「二次請け」、そこからさらに任される会社は「孫請け」や「三次請け」と呼ばれます。業界によっては四次請け、五次請けと階層が続くケースも珍しくありません。
| 呼び方 | 別名 | 発注者との関係 |
|---|---|---|
| 元請け | 一次請け | 発注者と直接契約し、仕事全体に責任を負う |
| 下請け | 二次請け | 元請けから仕事の一部を任される |
| 孫請け | 三次請け以降 | 下請けからさらに仕事を任される |
階層が増えるほど、実際に手を動かす会社と発注者との距離は遠くなり、現場の状況が発注者に伝わりにくくなる傾向があります。契約書のうえでは整理されていても、現場で何が起きているかを最上流の発注者が正確に把握できているとは限りません。
建設業・IT業界・物流業界に共通する構造
多重請負という言葉自体は、IT業界の記事で目にする機会が多いかもしれません。SIerと呼ばれる大手システム会社が発注者から仕事を受け、そこから何社もの協力会社を経由して実際の開発が進むという構造は広く知られています。建設業界でも、元請けのゼネコンから専門工事業者へと仕事が細分化されていく仕組みが古くから存在してきました。
物流・運送業界も例外ではありません。荷主企業から仕事を請け負った運送会社が、自社の車両だけでは対応しきれない分を他の運送会社に再委託し、その会社がさらに別の運送会社へ再委託するという流れが、求貨求車の情報ネットワークを介して日常的に行われています。二次請負や三次請負はもとより、五次請負や六次請負までが当たり前になっている領域があるとも指摘されており、多重請負は決してIT業界や建設業界だけの話ではありません。
建設業界では、こうした構造に一定の歯止めをかける仕組みとして、建設業法で一括下請負が原則として禁止されています。発注者があらかじめ書面で承諾した場合を除き、請け負った工事をそのまま丸ごと他の業者に投げてしまうことは認められていません。物流・運送業界には現状、これと同じ強さで再委託の階層そのものを制限する法律は存在せず、荷主企業と運送会社の間でどこまで再委託を認めるかは、個々の契約や商慣習に委ねられているのが実情です。
なぜ多重請負構造は解消されないのか
多重請負については、責任の所在がわかりにくくなるなど問題点が繰り返し指摘されてきました。それでもこの構造がなくならないのには、発注する側・受注する側それぞれの事情が関係しています。
発注側が管理コストを外部化したい思惑
発注者にとって、仕事に必要な人員や車両をすべて自社で抱えることは、繁忙期には心強い一方で、閑散期には人件費や維持費の負担として重くのしかかります。仕事を外部の会社に任せれば、必要なときに必要な分だけ手配できるため、人員や設備の増減にともなう管理コストを外部化できるという利点があります。この発想自体は特別なものではなく、多くの業界で合理的な経営判断として採用されてきました。
人手不足の穴を埋める即応力
受注側の会社にとっても、自社だけで対応しきれない仕事量を協力会社に振り分けることで、受注機会を逃さずに済むという利点があります。特に人手不足が深刻な業界では、自社の人員だけで完結させようとすると、せっかくの依頼を断らざるを得ない場面が増えてしまいます。次の請負先を確保しておくことは、事業を継続するうえでの一種の保険のような役割を果たしているといえるでしょう。
多重請負のメリットとデメリット

多重請負には、業界の慣習として続いてきた背景があるとおり一定のメリットも存在します。一方で、指摘されているデメリットも決して小さくありません。ここで一度整理しておきましょう。
メリット
- 繁閑の差に応じて人員や車両を柔軟に手配できる
- 専門性の高い工程だけを、その分野が得意な会社に任せられる
- 実績の少ない会社でも下請けとして経験を積む入口になる
特に新規参入したばかりの会社にとっては、下請けとして経験と実績を積みながら、将来的に元請けとして直接契約を得るための足がかりになる面もあります。
デメリット
- 契約が増えるたびに中間マージンが発生し、実際に作業する会社の取り分が減る
- 発注者から現場までの距離が遠くなり、責任の所在が曖昧になりやすい
- 末端の会社ほど労働環境や賃金水準への影響を受けやすい
下請け構造の階層が深くなるほど、実際に作業する会社に残る対価は目減りしやすく、末端の労働条件は悪化しやすいという指摘は、業界を問わず共通して見られる傾向です。
運送業界に根強く残る多重請負の実態
多重請負という構造は、実は運送業界においても長年の課題とされてきました。ここからは、運送業界特有の実態について詳しく見ていきます。
5次請け・6次請けが珍しくない下請構造
運送業界では、荷主企業から直接仕事を受ける一次請けの運送会社を頂点に、二次請け、三次請けと仕事が下りていく構造が広く見られます。中でも特徴的なのは、この階層が四次、五次、さらには六次にまで及ぶケースが珍しくないという点です。運送業界に関する調査でも、二次請負や三次請負はもとより、五次請負、六次請負までが当たり前になっている実態が指摘されており、中間マージンが運送会社の利益を圧迫している状況が浮き彫りになっています。
中間マージンがドライバーの手取りを圧迫する仕組み
荷主企業が支払う運賃のうち、実際に荷物を運ぶ運送会社の手元に残る金額は、間に入る会社の数だけ目減りしていきます。しかも運送業界は現在、深刻な人手不足に直面しています。国が試算した数値によれば、対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力は2024年時点で14.2パーセント、2030年には34.1パーセントまで不足する可能性があるとされています。
トラックドライバーの不足数についても、2020年度は約4万人だったものが2025年度には14万人を超え、2030年度には21万人を超えると見込まれています(参考:全日本トラック協会「知っていますか?物流の2024年問題」)。
こうした人手不足の状況で多重請負の階層が積み重なると、末端で実際にハンドルを握るドライバーの手取りにまでしわ寄せが及びやすくなります。荷主企業と運送会社が直接つながる仕組みが注目される背景には、この中間マージンの問題があります。
さらに、階層が深くなるほど荷主企業から見た運行状況の把握も難しくなります。実際に走っているのがどの会社のどのドライバーなのかが末端まで見えにくくなるため、遅延やトラブルが起きた際の連絡経路が複雑になり、初動対応が遅れる一因にもなりかねません。人手不足で余力が少ない状況だからこそ、こうした情報の見えにくさが現場の負担を増やしている面があります。
多重請負に関わる法律上の留意点
多重請負そのものを一律に禁止する法律はありませんが、取引の適正化や労働者保護の観点から、関連するいくつかの法律を押さえておく必要があります。
下請代金支払遅延等防止法が定める発注者の義務
下請代金支払遅延等防止法は、親事業者が下請事業者に対して優越的な立場を利用した不当な取引を行うことを防ぐための法律です。物品などを受領した日から60日以内に定めた支払期日までに代金を全額支払うことや、委託の内容・代金の額・支払期日などを記載した書面を交付することなどが義務づけられています(参考:公正取引委員会「下請代金支払遅延等防止法」)。
偽装請負・多重派遣に注意が必要な場面
請負契約という契約形態を取っていても、発注者が受注会社の労働者に直接指揮命令を行っている実態があれば、労働者派遣事業の許可を得ていない偽装請負に該当するおそれがあります。多重請負の階層が深くなるほど、現場での実際の指揮命令系統と契約上の関係にずれが生じやすくなるため、発注側・受注側の双方が契約内容と現場の実態を一致させておく意識が欠かせません。
多重請負から抜け出すために見ておきたい視点

ここまで見てきたとおり、多重請負には構造的な課題が伴います。では、この構造から抜け出すために、荷主企業や運送会社はどのような視点を持てばよいのでしょうか。
直接契約という選択肢
多重請負の問題の多くは、発注者と実際に作業する会社との間に複数の会社が介在することから生じています。裏を返せば、荷主企業と運送会社が直接つながる契約関係を結べれば、中間マージンの発生自体を減らせる可能性があります。近年は、荷主企業と運送会社を直接マッチングする検索サイトやプラットフォームが登場しており、こうしたサービスを活用する動きも広がりつつあります。
もっとも、直接契約に切り替えれば万事解決というわけでもありません。荷主企業側にとっては、これまで元請けの運送会社に任せていた配車調整や急な欠便対応を、ある程度自社でも把握しておく必要が出てきます。運送会社側にとっても、これまで元請けが担っていた営業活動を自ら行う必要が生じるため、双方に相応の準備が求められる点は理解しておくべきでしょう。
取引先を見極めるチェックポイント
- 実際に作業する担当者や車両の情報が明確に開示されているか
- 料金体系や中間マージンの有無について説明を受けられるか
- 契約内容が書面で明確に取り交わされているか
特に一点目は見落とされがちですが、実際に現場を担当するのが誰なのかが見えない契約は、トラブルが起きた際の対応も遅れがちです。取引先を選ぶ段階から、こうした点を確認しておく姿勢が欠かせません。
多重請負からの脱却とハコプロへの相談

多重請負の構造を根本から変えるには、荷主企業と運送会社がお互いの実態を見える形で直接つながる仕組みが欠かせません。ここでは、その一つの選択肢として運送会社検索サイト「ハコプロ」を紹介します。
荷主と運送会社を直接つなぐ仕組み
ハコプロは、株式会社LIGOが運営する運送会社検索サイトで、荷主企業と運送会社の直接契約を促進することを目的にしています。掲載運送会社数は約6万件、営業所数は約8.5万件という規模のデータベースを持ち、エリアや車両形状、輸送品目などの条件で運送会社を検索・比較できます。運送会社にとっては登録料・掲載料がいずれも無料で、写真や文章による情報更新も回数の制限なく行える点が特徴です。
ドライバーの顔が見える「ドライバー名鑑」
ハコプロ独自の機能である「ドライバー名鑑」では、ドライバーの年齢や社歴、運送にかける想いを掲載できます。二次請負、三次請負はもとより五次、六次請負までが当たり前になっている運送業界において、「誰が」荷物を運ぶのかを可視化できる点は、荷主企業にとって大きな安心材料になります。実際にハコプロを利用する北海道の運送会社からは「荷主から直で連絡をもらえたことが一番有難いんです。荷主との直接契約で一次請けになれば、交渉もできる」という声も寄せられています。
多重請負という構造は、業界の慣習として簡単には消えないかもしれません。それでも、荷主企業と運送会社が直接つながる選択肢を知っているかどうかで、今後の取引の在り方は大きく変わります。中間マージンや責任の所在に不安を感じている場合は、まず自社の条件に合う相手がどれくらいいるのか、実際に検索して確かめてみるところから始めてみましょう。
エリアや車両形状、輸送品目などの条件で、運送会社または荷主企業を検索・比較します。
ドライバー名鑑や会社PR、口コミなどの情報を参考にしながら、条件に合いそうな相手へ直接連絡を取ります。
やり取りが進んだ場合は、必要に応じて運営会社の担当者が仲介に入りながら、中間業者を介さない直接契約へとつなげていきます。
多重請負の階層に埋もれず、実際の取引相手が見える関係を築きたいと考えている方は、以下からハコプロへお気軽にお問い合わせください。


