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実運送体制管理簿とは?義務化の背景や要件・必要な記載項目・罰則についても解説!

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2024年2月13日の閣議において、荷主から運送業務を請け負う元請け事業者は「実運送体制管理簿」の作成と事務所への備え付けが義務付けられることが決定しました。

実運送体制管理簿には、各運送ごとに実運送を担う事業者の名称や貨物内容、運送区間などを記載しなければなりません。なぜそこまでする必要があるのでしょうか。

本記事では、実運送体制管理簿の概要や義務化の背景や要件、必要な記載項目や違反した場合の罰則について解説します。

目次

実運送体制管理簿とは

はじめに、実運送体制管理簿の概要と、義務化されるに至った背景について解説しましょう。

もともと「運送体制台帳」と呼ばれていたものが、2024年2月13日に閣議決定された貨物自動車運送事業法の改正案で「実運送体制管理簿」という正式名称になりました。

実運送体制管理簿とは、荷主から委託を受けたすべての元請け業者に、下請けや孫請けといった実運送を行う運送事業者の名称や輸送区間、荷物内容、何次の下請けか、といった内容の記載を義務付けるものです。

実運送体制管理簿の義務化の背景 

運送業界では、かねてよりトラックドライバー不足が常態化していました。そこに2024年4月から時間外労働が法規制されることで、さらなる労働力不足とそれに伴う輸送力不足が強く懸念されています。時間外労働が減れば、全職種の平均と比べて低い傾向にあるドライバーの賃金はさらに目減りし、大量離職を引き起こしかねません。そうなると国内全域において深刻な物流危機を招く恐れがあるでしょう。

この状況を解消するには、まず長時間労働を強いられる割に低賃金という慣習を改善することが不可欠となります。運送の世界は、多重下請け構造となっており、下請け、孫請けと下層になるほど報酬は減額され、労働に見合った賃金が収受できないのが現状です。

しかし荷主から元請け業者が受託すると、その先はブラックボックス化され、どれくらいの業者がおのおのいくらで仕事を請け負っているかがベールに包まれているケースがほとんどです。それが、偽装請負や名義貸しといった不適切行為や運行管理が不十分な企業への依頼などの温床となってきました。

荷主の中には、孫請けやひ孫請以上の委託を禁止している例があるものの、業界全体の健全化には至っていないのが現状です。そして、薄給に苦しむドライバーやその雇用者である運送事業者も力関係では弱い立場にあるため、泣き寝入りする他なかったのです。

この現状を根本的に解決する対策の一つとして、政府は実運送体制管理簿を義務化することにより下請け事業者の窮状を改善しようとする狙いがあります。どの業者にどんな業務を委託しているかを把握しているにも関わらず、それに見合った対価を支払っていないとすれば、あきらかに元請け事業者の責任となります。そこで上記のような制度を強制的に構築することによって、国土交通省のみならず総理大臣自らが10%の賃上げを目指すと明言しています。 

実運送体制管理簿の要件 

続いて、どのような前提条件で実運送体制管理簿を作成する必要があるかについて解説しましょう。

作成の単位 

すべての元請け事業者は、災害その他緊急やむを得ない場合を除いて、荷主から国土交通省令に定める重量以上の貨物を引き受けた場合に、その貨物の運送ごとに実運送体制管理簿を作成しなければなりません。

作成の方式 

実運送体制管理簿は、電磁的記録でも構わないことになっています。現実問題として、相当数の管理簿を頻繁に作成しなければならないことを考慮すると、そのすべてを紙で運用するのはかなり非効率と予想されるからです。

保管が必要な期間

実運送体制管理簿は、引き受けた貨物の運送が完了した日から一年間は、営業所で保管しておく必要があります。

実運送体制管理簿に必要な項目 

実運送体制管理簿では、多重下請け構造の透明化に必要な項目として、「実運送」を「誰が」「何を」「どの区間」運んでいるのかを明らかにする必要があります。こうすることで、実運送を担うすべての事業者が不合理な労働環境から脱却できることを目指します。

①実運送を行う事業者の称号または名称 
実運送を担うすべての事業者の称号または名称を記載します。ただし、下請けに出した業者が実運送でない場合は、その先の実運送業者まで追跡して確認のうえ記載する必要があります。

②実運送を行う貨物の内容及び区間 
さらに、実運送を行う貨物の内容と区間も記載しなければなりません。もしその業者が複数となる場合は、どの区間をどの業者が担当したかについてもあきらかにする必要があります。

③請負階層 
実運送事業者を把握することにより、必然的に各事業者の請負階層が把握できますが、これについても明記する必要があります。

実運送体制管理簿の作成や備え付けに違反した際の罰則は今のところ規定されない模様です。しかし後述するように、同じ貨物自動車運送事業法において、運送利用管理規定の作成や運送利用管理者の選任について、それぞれ100万円以下の罰則が規定されていることから、間接的には関係していると捉えることが妥当でしょう。この点は、今後の動向が注視されます。

運送利用管理規定に対する罰則 

貨物自動車運送事業法における運送利用管理規定では、元請け事業者は、
①実運送事業者に委託する運送業務のコストの概算額を把握し、その額を勘案した上で申し入れをする
②荷主から提示された運賃や料金が、当概算額よりも下回る場合は、荷主に対して運賃や料金の引き上げを交渉する
③2段階以上の下請け利用に制限をつける

といった健全化措置を講じるよう努力しなければならないとされています。
これに反する場合は、先ほども述べたように100万円以下の罰金が科されます。

上記3点の健全化措置が講じられているかを確認するには、多重下請け構造について明確にする必要があり、そのためにも実運送体制管理簿の存在が大きくものを言うはずです。つまり、実運送体制管理簿の作成に不備がある程度の体制しか整備できていない場合は、その管理の甘さを問われて実質的には罰則の対象になりうる可能性があるのです。

運送利用管理者の選任に対する罰則 

上記の健全化措置を実施するために、元請け事業者には運送利用管理者の選任が義務付けられており、これについても違反すると100万円以下の罰則が科されます。

運送利用管理者は、事業運営上の重要な決定に参加する管理的地位にある者(=役員レベル)とされており、元請け事業者も健全化措置を実施および管理する運送利用管理者に必要な権限を与え、意見を尊重しなければならないとされています。

これにより多重下請け構造の見える化と、その健全化に向けた動きに不備がある場合の責任の所在が明確となります。

同時に、運送利用管理者は実運送体制管理簿を作成するにあたり、その事務を監督する責任も負います。繰り返しになりますが、健全化措置をより高い精度で実行するとなれば、自ずと常に実運送体制管理簿の内容を照らし合わす必要があるため、やはり実運送体制管理簿の作成や備え付けの不備は、実質的に罰則の対象となり得ると理解しておく必要があるでしょう。

ただ、このような体制を徹底するとなると、元請事業者や運送利用管理者への負担は決して少なくありません。そこで、実運送体制管理簿の出力と管理をサポートするオンラインサービスもあるので、有効利用することが望ましいでしょう。      

なお本記事は、2024年2月13日に閣議決定された法改正案を基にした解釈・考察のため、最新の情報は国土交通省のページをご参照ください。

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