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アルコールチェック義務化とは?対象・ルール・罰則を実務目線で解説

アルコールチェック 運送
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「うちの会社は社用車が5台あるけど、アルコールチェックは必要なのか」「安全運転管理者が一人しかいない場合、どう対応すればいいのか」——こうした疑問を抱える担当者は、今も少なくない。

2022年の道路交通法改正によって段階的に施行されたアルコールチェック義務化は、対象事業者にとって無視できない法的義務となっている。違反した場合の罰則もあり、「知らなかった」では済まされない。

この記事では、アルコールチェック義務化の概要・対象者・具体的な運用ルール・罰則・よくある実務上の疑問まで、順を追って解説する。運送会社に限らず、社用車を保有するあらゆる事業者の担当者に役立つ内容にまとめた。

目次

アルコールチェック義務化の背景と経緯

義務化の直接的なきっかけは、2021年6月に千葉県八街市で発生した飲酒運転事故だ。トラック運転手が飲酒した状態で下校中の小学生の列に突っ込み、5人が死傷した。この事故を受け、政府は飲酒運転対策の強化を迫られ、警察庁が道路交通法施行規則を改正した。

改正は2段階で施行された。

  • 2022年4月1日:目視等による確認の義務化(安全運転管理者が運転前後に運転者の状態を目視等で確認し、酒気帯びの有無をチェック・記録する)
  • 2023年12月1日:アルコール検知器を使った確認の義務化(目視等に加え、アルコール検知器による測定が義務となる)

当初、アルコール検知器を用いた義務化は2022年10月に予定されていた。しかし、半導体不足などの影響でアルコール検知器の供給が追いつかなかったため、警察庁が延期を決定。最終的に2023年12月1日の施行となった経緯がある。

つまり現在は、「目視等による確認」と「アルコール検知器による確認」の両方が義務となっている状態だ。

義務化の対象者はどの範囲か

アルコールチェック義務化の対象は、道路交通法上の「安全運転管理者」を選任しなければならない事業者だ。

安全運転管理者の選任義務が生じる基準

安全運転管理者の選任義務が生じるのは、以下のいずれかの条件を満たす事業所(営業所単位)だ。

・乗車定員11人以上の自動車を1台以上使用している事業所
・その他の自動車(乗用車・トラックなど)を5台以上使用している事業所
※自動二輪車は0.5台換算

ここで注意が必要なのは、「5台」の数え方だ。よく混同されるが、この台数は事業所ごと(営業所ごと)にカウントする。本社と別の場所に営業所がある場合、それぞれで台数を計算する。

また、「社用車が4台だから関係ない」と考えている事業者も多いが、自動二輪車(バイク)を保有していれば0.5台換算で計算されるため、思わぬ形で要件を満たすケースもある。

対象となる車両の種類

対象となる自動車は、乗用車・バン・トラック・バスなど幅広い。自家用・社用を問わず、業務で使用する自動車が対象となる。公用車(官公庁・自治体の車両)も含まれる。

一方、専ら農耕の用に供する自動車(農業機械など)は除外される。

運送業者はどう扱われるか

一般貨物自動車運送事業者など、道路運送法や貨物自動車運送事業法に基づいて事業を行う事業者は、別途「運行管理者」の選任が義務付けられており、運行管理者による酒気帯び確認ルールが別に定められている。

道路交通法上の「安全運転管理者」制度と、貨物自動車運送事業法上の「運行管理者」制度は別の法律に基づく別の制度であり、両方が重なる場合もある点は整理しておきたい。

運行管理者と安全運転管理者の違い

「運行管理者」は貨物・旅客自動車運送事業者に義務付けられる国家資格保有者。「安全運転管理者」は道路交通法に基づき、一定台数以上の自動車を使用する事業所が選任する者。運送会社は両方の義務が重なることが多く、それぞれの法律の要件を別々に確認する必要がある。

具体的に何をすればいいか——義務の中身を整理する

義務化の対象事業者に課せられる具体的な義務は、以下の3点だ。

①運転前後の酒気帯び確認

安全運転管理者(または補助者)は、運転者が運転を開始する前と、運転を終えた後の両方で、酒気帯びの有無を確認しなければならない。

確認の方法は「目視等」と「アルコール検知器」の組み合わせだ。目視等とは、顔色・呼気の臭い・言動・眼のようすなどを直接観察することを指す。これに加え、アルコール検知器による数値測定が義務となっている。

ここで実務上の疑問として多いのが「1日に何回行えばいいのか」という点だ。答えは「運転の開始前と終了後の各1回」が原則となる。ただし、一人の運転者が日中に複数の配送をこなす場合、最初の出発前と最後の帰社後に行えば足りるとされている。ただし途中で長時間の休憩がある場合や、業務の性質によっては中間確認を設けることが推奨される。

②確認結果の記録・保存

酒気帯び確認の結果は、1年間保存しなければならない。記録すべき内容は以下のとおり。

  • 確認を行った安全運転管理者(または補助者)の氏名
  • 運転者の氏名
  • 確認の日時
  • 確認の方法(目視等・アルコール検知器など)
  • 酒気帯びの有無
  • 指示事項(酒気帯びが疑われる場合の対応など)

記録の形式は紙でも電子データでも構わない。ただし、後から改ざんができない形式で保管することが望ましい。警察による立入検査が行われた際に提出を求められるため、整然と管理しておく必要がある。

③アルコール検知器の常時有効保持

アルコール検知器は、常時有効な状態で保持する義務がある。電池切れや故障のまま放置していた場合は義務を果たしていないと判断される可能性がある。定期的な動作確認と消耗品(マウスピースなど)の補充を行う運用体制が必要だ。

どのような機器を使えばよいかについては、警察庁が「呼気中のアルコールを検知し、その有無またはその濃度を警告するための装置」と定義しており、市販のものであれば基本的に要件を満たす。ただし、スマートフォンアプリ単体での代替は認められない。

「遠隔地」や「一人の場合」の実務的な対応

義務化で最も現場が頭を抱えるのが、「安全運転管理者が不在の場合」や「営業所から遠い場所で業務を開始する場合」への対応だ。

安全運転管理者が常駐できない場合

安全運転管理者は副安全運転管理者や補助者を指定し、確認業務を代行させることができる。ただし、この場合でも確認結果は安全運転管理者に報告・把握される体制が必要だ。補助者の確認で「それで終わり」という運用は適切ではない。

テレワーク・直行直帰・遠隔地での対応

テレワーク中の従業員が自宅から直接社用車で業務へ向かう場合や、直行直帰が常態化している場合は、電話・ビデオ通話・専用アプリなどを活用したリモートでの確認が認められている。

具体的には、次のような方法が実務で取られている。

  • 運転者が自宅でアルコール検知器を使用し、その結果をビデオ通話で安全運転管理者に見せる
  • 検知結果をスマートフォンで撮影し、チャットツールで送信する
  • IoT連携型のアルコール検知器を使用し、クラウド上で管理者がリアルタイムに確認する

ただし、これらはあくまで「管理者が状況を把握できる手段」として認められるものであり、測定値の改ざんを防ぐ観点から、不正が行えない運用設計が求められる。数値の事後報告だけで済ませるような運用は、実態として確認義務を果たしていないとみなされるリスクがある。

運転者が一人の営業所の場合

「安全運転管理者と運転者が同一人物」というケースは、中小事業者では珍しくない。この場合、自分自身でアルコール検知器を使用し、その結果を記録するという運用が認められている。ただし、自己申告による不正のリスクが高まるため、IoT検知器の活用や第三者による抜き打ち確認の仕組みを設けることが望ましいとされる。

義務に違反した場合の罰則

罰則の内容を確認しておこう。道路交通法上、安全運転管理者に関する義務に違反した場合は、事業主(法人または個人)に対して5万円以下の罰金が科される可能性がある(道路交通法第123条)。

金額だけ見ると「それほど高くない」と感じるかもしれないが、実際の影響はもっと広範だ。

  • 警察署から改善指導・行政処分を受ける可能性がある
  • 違反事実が公表され、取引先や荷主企業からの信頼を失うリスクがある
  • 酒気帯び運転が発生した場合、管理義務を怠っていた事業者として損害賠償責任を問われるケースがある

特に運送業においては、荷主企業が取引先の安全管理体制を審査する動きが広がっている。アルコールチェックの運用状況は、今後の受注に直結する経営リスクとして捉えるべきだ。

なお、酒気帯び運転そのものに対する罰則(3年以下の懲役または50万円以下の罰金)とは別に、事業者の管理義務違反が問われる点は覚えておきたい。

運用ルールを整備するための実践ステップ

義務の内容を理解したうえで、実際にどう運用体制を整えるかが実務担当者の本題だろう。以下にステップを示す。

STEP
安全運転管理者を正式に選任・届出する

安全運転管理者は、2年以上の運転経験を持つなど一定の要件を満たす者を選任し、所轄の警察署へ届出が必要だ。未届けの場合もそれ自体が道路交通法違反となる。

STEP
アルコール検知器を導入する

事業所ごとに1台以上のアルコール検知器を用意する。台数の多い事業所では、朝の出発ラッシュ時に全員が時間内に測定できるよう、台数を複数確保することも検討したい。検知器は定期的にメーカー推奨の校正を行い、動作確認の記録も残す。

STEP
確認・記録フローを社内ルールとして文書化する

誰が・いつ・どこで・どのように確認するかを明文化し、全運転者に周知する。「なんとなくやっている」という状態では、担当者が変わったときに運用が崩れる。チェックシートやシステムへの入力フォームを整備し、確認が抜け落ちないようにする。

STEP
記録を1年間保存できる管理体制を整える

紙での管理は保管スペースと検索性の問題が出やすい。クラウドベースの運行管理システムや専用アプリを活用すると、記録の一元管理・検索・バックアップが容易になる。警察の立入検査に備え、過去1年分をすぐに提示できる状態を保つ。

STEP
定期的に運用状況を見直す

制度施行直後に整備したルールが、人員変動や業務フローの変化によって形骸化しているケースは多い。四半期ごとに安全運転管理者が運用状況を確認し、不備があれば改善するサイクルを設けることが重要だ。

運送業者が特に注意すべきポイント

一般企業と異なり、運送会社には固有の運用上の難しさがある。ドライバーが複数の拠点から出発する、乗務前点呼が深夜・早朝に行われる、点呼責任者(運行管理者)と安全運転管理者の役割が重複するなど、法律の解釈と実務の折り合いをどうつけるかが課題となりやすい。

点呼とアルコールチェックの関係

貨物自動車運送事業法に基づく乗務前点呼では、すでにアルコール検知器による酒気帯び確認が義務付けられている。では、道路交通法上のアルコールチェック義務とはどう関係するのか。

結論を言えば、点呼時のアルコール確認が道路交通法上の義務を兼ねると判断されるケースが多いが、管轄省庁が異なる(国土交通省と警察庁)ため、完全に一体化して運用できるかは事業者の状況によって異なる。心配な場合は所轄の警察署や運輸支局に確認することを強く推奨する。

荷主との関係にも影響が出始めている

運送会社が荷主企業と取引を続けるうえで、安全管理体制の証明が求められる場面が増えている。アルコールチェックの実施記録を提示できるかどうかが、契約更新の判断材料になるケースも出てきた。

荷主企業側から見ても、委託先の運送会社が適切なアルコールチェックを実施しているかどうかは、自社のコンプライアンスリスクに直結する。ホワイト物流の推進という観点からも、安全管理体制の可視化は今後ますます重要になるだろう。

運送会社の安全管理体制や取り組みを可視化する手段として、ハコプロのような運送会社検索サービスも活用されている。ハコプロでは会社情報やドライバーの取り組みを掲載できるため、荷主企業への信頼性アピールの場としても機能する。

よくある疑問——実務担当者が詰まりやすいポイント

アルコール検知器の数値はいくつ以上だと酒気帯びか

道路交通法上の酒気帯び運転は呼気1リットル中0.15mg以上とされている。ただし、アルコールチェック義務化においては「酒気帯びかどうかの判定」ではなく、「アルコールが検知されたかどうかの確認」が目的だ。微量でも検知された場合は、状況に応じて乗務を控えさせる判断が求められる。「0.14mgだからギリギリOK」という運用は趣旨から外れている。

マウスピースは毎回交換しなければいけないか

衛生面と感染症リスクの観点から、使い捨てのマウスピースを1回ごとに交換することが推奨されている。マウスピースが不足して測定できない状態を避けるため、定期的な在庫確認と発注サイクルの設定が必要だ。

外部委託している運転者(傭車など)はどうなるか

傭車や外部委託のドライバーが業務に携わる場合、そのドライバーが所属する事業者側でアルコールチェックを行う義務がある。委託元の事業者が直接管理する義務はないが、取引先の管理体制が不十分であれば、間接的なリスクを抱えることになる。契約書や業務委託の取り決めの中で、安全管理の要件を明示することが現実的な対応策だ。

記録様式に指定はあるか

記録の様式に法定フォーマットはない。必要事項が記載されていれば、自社で作成したチェックシートでも問題ない。ただし警察庁のWebサイトに参考様式が公開されており、これをベースに自社の業務フローに合わせてカスタマイズする事業者が多い。

アルコールチェック義務化を「形式対応」で終わらせないために

義務化対応を進める事業者の中に、「とりあえず検知器を買って記録用紙を作った」で止まっているケースが散見される。しかし、制度の趣旨は「飲酒運転による事故をゼロにする」ことであり、書類上の整備だけでは本来の目的を達せない。

実務的な観点から、形式対応に陥りやすい落とし穴を整理しておく。

形式対応の典型的なパターン
・ドライバーが自分で記録を記入し、管理者がほぼノーチェックで押印するだけになっている
・アルコール検知器の電池が切れたまま放置されている
・記録は残っているが、数値の異常があっても誰も確認していない
・テレワーク勤務者の直行直帰について確認の仕組みが存在しない

これらは「記録は存在する」が「実質的な確認が行われていない」状態であり、事故が発生した際に管理者の責任が問われやすい。

では、どうすれば実効性のある運用になるか。重要なのは、ルールの設計よりも「誰が・なぜこのルールを守るのか」という動機付けと文化の醸成だ。安全運転管理者が形式的な役割にとどまらず、ドライバーとのコミュニケーションを通じて飲酒リスクの実態把握に努める体制が、長期的に機能する組織をつくる。

運送会社の安全管理体制の整備はハコプロにご相談を

アルコールチェック義務化への対応は、単なる法令遵守の問題ではなく、事業の継続性と社会的信頼に関わるテーマだ。特に運送会社にとっては、荷主企業との取引継続にも影響する要素として、対応の質が問われる時代になっている。

ハコプロは、運送会社と荷主企業の直接契約を促進する運送会社検索サービスだ。全国6万件以上の運送会社が掲載されており、安全管理への取り組みを含む会社情報を自由に発信できる。「ドライバー名鑑」機能を通じて会社の取り組み姿勢を可視化することで、安全意識の高い荷主企業からの選ばれやすさにつながる。

運送会社への掲載は完全無料で、登録料・使用料・情報更新費用はすべて0円。安全管理体制の整備を進めつつ、それを荷主企業に適切にアピールする手段として活用を検討してみてほしい。

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