運送業を経営していると、売上は例年並みなのに手元に残る利益がじわじわと減っていると感じる場面が少なくありません。燃料費の高騰やドライバー不足、2024年問題による労働時間の上限規制など、コスト構造を圧迫する要因は年々増えています。
本記事では、運送業の利益率の実態を業界データから確認したうえで、粗利率や営業利益率の計算方法、利益を圧迫している原価構造、そして現場で実践できる改善策までを順番に解説します。自社の数字を客観的に見直すきっかけとして役立てていただければと思います。
運送業の利益率が低いといわれる理由

運送業は他の業種と比べても利益率が低い水準にとどまりやすい業界だといわれています。まずは業界全体の水準を確認したうえで、なぜ薄利になりやすいのか、その背景を整理していきます。
業界平均の営業利益率はどのくらいか
公益社団法人全日本トラック協会が公表している経営分析報告書によると、令和4年度決算における一般貨物自動車運送事業者の営業損益率は0.0%、売上高営業損益率も0.4%にとどまっています。前年度は営業損益率がマイナス0.9%だったため0.9ポイントの改善はみられるものの、依然として利益がほとんど残らない水準で経営している事業者が多いことがうかがえます(全日本トラック協会「経営分析報告書」)。
ただし、この数字をそのまま自社に当てはめて悲観する必要はありません。同じ調査では、保有車両台数が51両以上の事業者では経常利益率が2.6%を超える水準まで回復している一方、20両以下の小規模事業者では営業損益段階で赤字となるケースが目立つとも報告されています。規模や運行体制によって利益率には大きな幅があり、業界平均だけを眺めていては自社固有の課題は見えてきません。
2024年問題と燃料費高騰が重なる構造
2024年4月からドライバーの時間外労働に上限が設けられたことで、長時間労働に支えられてきた輸送力の一部が失われました。同じ荷量を運ぶためにドライバーの人数や車両を増やせば、人件費や固定費はそのぶん増加します。一方で運賃への転嫁が追いついていない事業者も多く、コストの増加がそのまま利益率の低下として表面化しやすくなっているのが実情です。
燃料費についても、原油価格や為替の変動を受けて上下動が大きく、燃料サーチャージ制度を導入していない事業者ほど収益が変動費の影響を直接受けやすくなります。人手不足と燃料高、そして2024年問題という三つの要因が同時に押し寄せていることが、運送業の利益率が構造的に薄くなりやすい大きな理由といえるでしょう。
利益率・粗利率を正しく把握するための計算方法
感覚だけで「今期は苦しい」と判断していると、どこに手を打てば改善するのかが見えてきません。まずは自社の数字を正しく計算できる状態にしておくことが、改善の出発点になります。
営業利益率と粗利率の計算式
営業利益率は「営業利益÷売上高×100」で求められ、本業の輸送事業でどれだけ利益を生み出せているかを示す指標です。一方の粗利率は「(売上高-売上原価)÷売上高×100」で計算し、運賃収入から燃料費や人件費などの直接原価を差し引いた段階での利益率を表します。
粗利率だけを見て一喜一憂するのではなく、そこから販管費を差し引いた営業利益率まで確認して初めて、実際に手元へ残る利益の水準がわかります。案件ごとの見積もりを作る段階では粗利率を、経営全体の健全性を判断する段階では営業利益率を、それぞれ使い分けて確認する習慣をつけておきましょう。
案件・路線ごとの採算管理という視点
会社全体の平均値だけを追いかけていると、実は赤字を出し続けている路線や荷主が、黒字の案件によって見えなくなっているという事態が起こりえます。車両別・路線別・荷主別に、燃料費や人件費といった変動費を差し引いた限界利益を算出し、どの案件が本当に利益へ貢献しているのかを可視化することが重要です。
不採算の案件が見つかった場合には、運賃交渉を行うか、それでも改善しないのであれば撤退を検討するという基準をあらかじめ社内で決めておくと、感覚に頼らない判断がしやすくなります。
利益率を左右する4つの原価要素

運送業の原価は、大きく分けて4つの要素で構成されています。それぞれがどの程度の比重を占めているのかを把握しておくと、どこから手を付ければ利益率の改善につながりやすいかが見えてきます。
全日本トラック協会が公表している経営分析資料によれば、運送原価に占める割合は人件費が41.4%ともっとも大きく、次いで燃料油脂費が16.3%、修繕費が6.8%、車両などの減価償却費が6.7%と続き、これら上位4項目でおよそ7割を占めているとされています(詳細は全日本トラック協会が公表する経営分析資料をご参照ください)。
| 原価項目 | 原価に占める割合の目安 |
|---|---|
| 人件費 | 約41% |
| 燃料油脂費 | 約16% |
| 修繕費 | 約7% |
| 車両減価償却費 | 約7% |
| その他(外注費・保険料等) | 約29% |
人件費
労働集約型の業種である運送業では、人件費が原価の4割以上を占めています。ドライバー不足が続くなか採用競争力を保つためには賃金水準を維持・向上させる必要がある一方、運賃に転嫁できなければそのまま利益を圧迫します。時間外労働の上限規制もあり、限られた稼働時間の中でいかに一人あたりの生産性を高めるかが問われる項目です。
燃料費
燃料費は原油相場や為替の影響を強く受ける変動費であり、経営努力だけでコントロールしきれない部分もあります。エコドライブの徹底や空車回送の削減といった現場努力に加え、燃料価格の変動分を運賃に反映する燃料サーチャージ制度を荷主と合意しておくことが、利益率を安定させるうえで有効です。
車両費・修繕費
車両の減価償却費や修繕費も、原価全体の1割強を占める項目です。古い車両を無理に使い続けると修繕費がかさむ一方、更新のタイミングを誤ると資金繰りを圧迫します。走行距離や稼働年数に応じた計画的な車両更新を行うことが、中長期的な原価コントロールにつながります。
外注費と多重下請け構造
物流業界では2次請け、3次請けはもとより、5次・6次請負までが常態化しているといわれています。案件が下請けの階層を経るたびに中間マージンが差し引かれ、実際に荷物を運ぶ運送会社の手元に残る運賃はそのぶん目減りします。多重下請け構造そのものが、業界全体の利益率を押し下げている要因のひとつです。
利益率を改善するための具体的な打ち手

原価構造を理解したうえで、次に取り組みたいのが実際の改善策です。ここでは、比較的着手しやすい順に3つのステップとして整理します。
まずは車両がどれだけ荷物を積んで走行しているかを示す実車率や、空車回送の割合を数値で把握します。可視化するだけで、無駄な空走行や非効率な配車ルートが見つかることは珍しくありません。
路線別・荷主別に変動費を差し引いた限界利益を算出し、どの案件が実際に利益へ貢献しているかを社内で共有します。不採算の案件を放置しないための判断材料になります。
可視化した数字は、荷主との運賃交渉における説得材料になります。感覚論ではなく実際のコストデータを示すことで、燃料費や人件費の上昇分を運賃に反映してもらいやすくなります。
こうした社内改善に加えて、そもそも案件をどこから受注するかという契約構造そのものを見直すことも、利益率改善においては欠かせない視点になります。
荷主との直接契約が利益率改善に効く理由
ここまで見てきたコスト削減や案件別の採算管理は、いずれも自社の内側でできる工夫です。一方で、下請けの階層を経由することで発生する中間マージンは、社内努力だけでは削り切れません。この構造に踏み込むには、荷主との契約関係そのものを見直す必要があります。
中間マージンが利益を圧迫する仕組み
元請けから2次請け、3次請けへと案件が流れるたびに、それぞれの段階でマージンが差し引かれます。実際に荷物を運ぶ運送会社が受け取る運賃は、荷主が最初に支払った金額よりも大きく目減りしていることが少なくありません。荷主と直接契約を結ぶことができれば、この中間マージンの分だけ運賃を適正な水準に近づけられる可能性があります。
- 中間マージンを削減し、運賃を適正化しやすくなる
- 荷主と直接やり取りすることで、条件面の交渉がしやすくなる
- 継続的な取引関係を築き、案件の安定確保につながる
ドライバーの見える化が信頼につながる
荷主企業からすると、多重下請けが常態化している業界において「誰が実際に荷物を運ぶのか」が見えにくいことが、直接契約をためらう一因になっています。運送業に特化した検索サービス「ハコプロ」では、掲載運送会社数6万件、営業所数8.5万件という規模のデータベースを持ち、ドライバーの年齢や社歴、運送にかける想いまで掲載する「ドライバー名鑑」という機能を備えています。誰が荷物を運ぶのかを可視化することで、荷主企業に安心感を提供し、直接契約への心理的なハードルを下げる仕組みになっています。
運送会社側は掲載料・登録料・使用料のいずれも無料で利用できるため、Webサイトの整備やSEO対策に予算や時間を割けない中小規模の事業者にとっても、荷主開拓の入口として活用しやすいサービスといえます。
利益率の改善は、社内のコスト管理と、荷主との契約構造の見直しを両輪で進めることで、初めて持続的な効果を発揮します。どちらか一方だけに取り組んでも、効果は限定的になりがちです。
利益率の改善は一人で抱え込まずに相談を
ここまで、運送業の利益率が低くなりやすい背景と、計算方法、原価構造、そして具体的な改善の打ち手を確認してきました。数字を可視化し、案件ごとの採算を把握することは、地道ではありますが利益率改善の土台になります。
運送業の利益率は業界平均で1%を下回る水準にとどまりやすく、規模や運行体制によって差が大きい。人件費・燃料費・車両費・外注費という4つの原価要素を把握し、案件別の採算管理と荷主との直接契約という両輪で改善を進めることが鍵になる。
とはいえ、荷主との直接契約は自社だけで一から開拓するには時間も労力もかかります。「ハコプロ」は、運送業に特化した運送会社検索サービスとして、株式会社LIGOが運営しており、荷主企業と運送会社の直接契約を促進することで、多重下請け構造の解消と物流業界のホワイト化を目指しています。掲載は完全無料で、写真や会社の魅力を伝える情報を回数の制限なく更新できるため、ホームページを持たない事業者でも自社の強みを発信しやすいのが特徴です。
まずは自社の利益率の現状を数字で確認し、そのうえで荷主開拓の選択肢のひとつとして、ハコプロへの掲載や相談を検討してみてはいかがでしょうか。


