物流SaaSとは何か システムの基本を押さえる

物流SaaSとは、倉庫管理や輸配送管理といった物流業務をクラウド上で行えるようにしたソフトウェアの総称です。自社サーバーに専用ソフトを導入するオンプレミス型とは異なり、インターネット環境さえあればブラウザ経由でシステムにアクセスでき、契約後すぐに使い始められる点が特徴といえます。近年は倉庫業務から配車、受注管理まで幅広い領域でSaaS型のサービスが登場しており、物流の現場を支える基盤の一つになりつつあります。
SaaSと従来のオンプレミス型の違い
オンプレミス型のシステムは、自社の設備としてサーバーを保有し、その上でソフトウェアを稼働させる形態です。カスタマイズの自由度が高い一方で、導入時にまとまった初期投資が必要になり、保守や更新作業も自社で担わなければなりません。対してSaaS型は提供事業者側がサーバーとソフトウェアの両方を管理するため、利用企業は月額料金を支払うだけで最新の機能を使い続けられます。中小規模の運送会社や荷主企業にとっては、この運用負担の軽さが導入のハードルを下げる要因になっています。
物流領域における代表的なSaaSの種類
物流SaaSと一口にいっても、対応する業務範囲によっていくつかのタイプに分かれます。代表的なものは次のとおりです。
- WMS(倉庫管理システム):入出庫や在庫の状況を可視化し、庫内作業の精度を高める
- TMS(輸配送管理システム):配車計画や車両の稼働状況を管理し、輸送の効率化を支える
- OMS(受注管理システム):複数チャネルからの受注情報を一元管理し、出荷指示までをつなぐ
これらは単独で導入されることもあれば、複数のシステムを連携させて使われることもあります。自社がどの業務にボトルネックを抱えているかによって、優先すべきSaaSの種類は変わってきます。
物流SaaSの導入が進む背景にある2024年問題とドライバー不足

物流SaaSへの関心が高まっている背景には、いわゆる2024年問題があります。2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年間960時間という上限が設けられ、これまで長時間労働に支えられてきた輸送体制の見直しが迫られました。人の稼働に頼っていた部分をシステムでどこまで補えるかが、各社の実務上のテーマになっています。
輸送能力の34パーセントが不足するという試算
NX総合研究所の推計では、2030年度にはドライバー不足の影響だけで輸送能力の19.5パーセント(5.4億トン相当)が不足し、2024年問題による影響と合わせると輸送能力全体の34.1パーセント(9.4億トン相当)が不足する可能性があるとされています(出典:Logistics Today「30年度のトラック輸送能力34.1%不足、NX総研推計」)。これは決して遠い未来の話ではなく、既に多くの荷主企業が配送パートナーの確保に苦労し始めている現状の延長線上にある数字です。
トラックドライバーは全産業平均と比べて若年層の割合が低く、50歳から64歳の中年層が約4割を占めているとも指摘されています。担い手の高齢化とセットで輸送能力不足を捉える必要があります。
EC市場の拡大と配送の小口化
ドライバー不足に加えて、EC市場の拡大により配送の小口多頻度化も進んでいます。以前は大口の荷物をまとめて運べば済んでいた輸送が、細かい単位での配送を求められるようになり、庫内作業や配車計画はより複雑になりました。物流SaaSは、この複雑さを人の勘や経験だけに頼らず、データに基づいて整理し直す手段として注目されているといえるでしょう。
物流SaaS導入で得られる主なメリット

物流DX市場は今後も拡大が見込まれています。富士経済の調査によると、次世代物流システム・サービス市場は2030年に1兆1670億円(2023年比162.9パーセント)まで拡大すると予測されており、その中でもWMSは457億円(2023年比57.6パーセント増)まで伸びる見通しです(出典:MONOist「物流DX市場は2030年に1兆1670億円、自動化やデジタル化がけん引」)。この成長の背景には、SaaS導入企業が実際に得ている効果があります。
初期費用を抑えてスピーディーに始められる
SaaS型のシステムは自社でサーバーを用意する必要がないため、初期投資を大きく抑えられます。契約からアカウント発行までの期間も短く、繁忙期を待たずに導入できるケースが多いのが実務上のメリットです。まずは一部の拠点や業務からスモールスタートし、効果を確認しながら対象範囲を広げていくという進め方もしやすくなります。
データがリアルタイムで可視化され属人化を防げる
在庫数や車両の稼働状況といった情報がリアルタイムで共有されることで、特定の担当者しか状況を把握できないという属人化を避けやすくなります。担当者の急な休みや退職があっても、システム上のデータを見れば誰でも業務を引き継げる状態をつくれることは、人手不足が続く現場にとって地味ながら大きな安心材料です。
他システムとの連携や拡張がしやすい
クラウド上で稼働するSaaSは、会計システムや販売管理システムなどとAPI連携しやすい設計になっていることが多く、事業の成長に合わせて機能を追加していける柔軟性も備えています。将来的に拠点数や取扱品目が増えた場合でも、システムを入れ替えることなく対応範囲を広げられる可能性が高いといえるでしょう。
導入前に押さえておきたいデメリットと注意点
物流SaaSは便利な反面、導入すれば自動的に課題が解決するわけではありません。契約前に把握しておくべき注意点も存在します。
継続的なランニングコストと通信環境への依存
初期費用を抑えられる一方で、SaaSは月額料金や従量課金が継続的に発生します。長期間利用する前提で見ると、オンプレミス型と比較したコストの優劣は事業規模や利用年数によって変わってくる点に注意が必要です。またインターネット環境に依存するため、通信障害が発生した際には業務が一時的に止まってしまうリスクも想定しておく必要があります。
現場に定着させるための教育負担
どれほど優れたシステムであっても、現場のスタッフが使いこなせなければ効果は発揮されません。特にベテランのスタッフほど、紙やホワイトボードを使った従来のやり方に慣れているため、操作研修や運用ルールの整備に一定の時間がかかることを見込んでおいたほうがよいでしょう。導入時だけでなく、定着するまでの数か月をどう伴走するかが成否を分けます。
目的別に見る物流SaaSの選び方のポイント

市場には数多くの物流SaaSが存在するため、機能の多さや知名度だけで選んでしまうと、自社の業務に合わずに使われなくなってしまうことがあります。選定にあたっては、次のような視点を順番に確認していくことをおすすめします。
- 自社の課題を具体的に特定する(在庫のずれか、配車の非効率かなど)
- 現場での操作性を実際の画面で確認する
- 既存の基幹システムや会計システムとの連携可否を確認する
- 導入コストと得られる効果を照らし合わせて費用対効果を試算する
- データの保管方法やアクセス権限などセキュリティ体制を確認する
WMS・TMS・OMSの使い分け
倉庫内の在庫精度に課題があるならWMS、配車や輸送ルートの効率化を優先したいならTMS、複数チャネルの受注を一本化したいならOMSというように、自社が最も困っている業務から着手すると、投資対効果を実感しやすくなります。すべてを一度に導入しようとするより、優先順位を明確にしたほうが現場の混乱も少なく済むでしょう。
サポート体制と導入実績も確認材料に
機能面だけでなく、導入後の問い合わせにどこまで対応してもらえるかも重要な判断材料です。同業種での導入実績があるベンダーであれば、業界特有の商習慣を踏まえた提案を受けられる可能性が高く、初めてSaaSを導入する企業にとっては心強い材料になります。
システムだけでは埋まらない「運ぶ人」の課題

ここまで見てきたように、物流SaaSは在庫や配車の情報を整理し、業務のムダを減らすうえで有効な手段です。ただし、SaaSが解決してくれるのはあくまで社内のオペレーションであり、「誰に荷物を運んでもらうか」という運送パートナーそのものの確保は、また別の課題として残ります。ここで重要なのは、システムの効率化と運送体制づくりは、両輪で進める必要があるという視点です。
多重下請け構造とドライバー不足が生むもう一つのボトルネック
運送業界では、5次請け・6次請けといった多重下請け構造が常態化している現場が少なくありません。荷主から運送会社に依頼が渡るまでに複数の業者を経由することで中間マージンが発生し、実際に荷物を運ぶ運送会社の手元に残る利益が圧迫されているのが実情です。加えて、運送業界全体では2030年に約25万人、2040年には約100万人規模のドライバー不足になるとも見込まれており、現場の高齢化も進んでいます。物流SaaSを導入して社内業務を効率化できても、運んでくれるパートナーそのものが見つからなければ、輸送は成立しません。
運送会社の実態を可視化する「ハコプロ」という選択肢
こうした課題に対して、荷主企業と運送会社を直接つなぐ運送会社検索サイト「ハコプロ」というアプローチもあります。ハコプロには全国47都道府県で約6万社の運送会社、8.5万件の営業所が登録されており、エリアや車両形状、輸送品目といった条件から荷主企業が運送会社を検索し、直接問い合わせられる仕組みになっています。中間業者を挟まずに一次請けとして契約できれば、運送会社側は適正な運賃を確保しやすくなり、荷主企業側も余分な中間マージンを見直すきっかけになります。
ハコプロならではの特徴として、ドライバーの年齢や社歴、仕事への想いを掲載する「ドライバー名鑑」があります。何次請けかが分かりづらい業界において、「誰が荷物を運ぶのか」を可視化できることは、荷主企業にとって安心材料の一つになるでしょう。また独自の基準で運送会社を認定する「ホワイト物流認定マーク」も用意されており、労働環境の改善に取り組む会社を見分ける手がかりにもなります。運送会社側の掲載は登録料・使用料ともに0円で、情報更新の回数や写真の枚数にも制限がないため、自社の魅力を継続的に発信し続けられる点も特徴です。
「ハコプロを通して、荷主から直で連絡をもらえたことが一番有難いんです。荷主との直接契約で一次請けになれば、交渉もできる」―北海道 みどり運輸 高村社長
実際に、北海道の荷主企業が苫小牧港から農協への肥料輸送を依頼する運送会社を探していたところ、ハコプロを通じて釧路市のみどり運輸とのマッチングが成立した事例もあります。物流SaaSでオペレーションを整えつつ、運送パートナーの探し方そのものも見直してみることで、輸送体制全体の安定度は変わってくるはずです。
まとめ ハコプロへの相談も選択肢に
物流SaaSは、在庫や配車、受注といった業務をクラウド上で一元管理し、2024年問題やドライバー不足が進む時代の輸送体制を支える有効な手段です。初期費用を抑えて始められる一方、ランニングコストや現場への定着といった注意点もあるため、自社の課題を明確にしたうえで、目的に合ったシステムを選ぶことが欠かせません。
そのうえで、システムの内側だけでなく、実際に荷物を運んでくれる運送会社との関係づくりまで視野を広げてみると、輸送体制の見直しはより現実的なものになります。荷主企業として新しい配送パートナーを探している方も、運送会社として直接契約による荷主開拓を進めたい方も、まずはハコプロで自社の条件に合う相手を探してみてはいかがでしょうか。担当者に直接相談したい場合は、以下からお気軽にお問い合わせください。


