「トラックの1日の走行距離は何キロまでと法律で決まっているのか」と検索してこのページにたどり着いた方は多いのではないでしょうか。実は、国が定めているのは走行距離そのものではなく、拘束時間や運転時間といった「時間」に関するルールです。距離の上限は明文化されていないものの、時間の規制を積み上げていくと、現実的に走行できる距離はおのずと絞られてきます。この記事では、トラックドライバーの労働時間を定める改善基準告示の内容と、そこから逆算できる1日の走行距離の目安、2024年の法改正が現場に与えた影響までを整理します。
トラックの1日の走行距離に、法律の上限は明記されていない
結論からお伝えすると、道路運送車両法や労働基準法のどこを見ても「トラックは1日〇〇キロまで」という距離の上限は定められていません。運送業を規制する法令が対象にしているのは、あくまでドライバーの拘束時間・運転時間・休息期間といった時間の要素です。距離ではなく時間で管理する仕組みになっているため、同じ400キロの輸送でも、道路事情や荷役の有無によって法令上の扱いは変わってきます。
改善基準告示が規制しているのは「距離」ではなく「拘束時間」
トラックドライバーの働き方を具体的に定めているのが、厚生労働省告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」、通称改善基準告示です。この告示が管理の対象としているのは、出庫から帰庫までの拘束時間、実際にハンドルを握る運転時間、そして勤務と勤務の間に確保すべき休息期間の3つです。走行距離という数字は、これらの時間規制を守った結果として事後的に決まる副産物という位置づけになります。
なぜ距離規制ではなく時間規制なのか
距離ではなく時間を軸に規制する理由は、ドライバーの過労運転を防ぐという告示の目的にあります。同じ300キロでも、渋滞の多い都市部と信号の少ない地方道路では所要時間が大きく異なります。距離だけを基準にしてしまうと、道路状況によっては規制の実効性が失われてしまいます。そこで、実際に体にかかる負荷に近い「時間」を管理指標に据えることで、道路状況にかかわらず過重労働を防ぐ設計になっているのです。
改善基準告示が定める拘束時間と休息期間のルール(2024年4月改正)

改善基準告示は物流の2024年問題への対応として、2024年4月1日に大きく改正されました。ここで走行距離の目安を計算する前に、まず改正後の基本ルールを押さえておきましょう。厚生労働省の特設ポータルサイトでも詳しい解説が公開されています。
1日の拘束時間は原則13時間、最大15時間まで
1日あたりの拘束時間は、原則として13時間以内とされています。業務の都合でこれを超える場合でも上限は15時間までで、そのうち14時間を超える回数は週2回が目安とされています。ここで注意したいのは、拘束時間には荷待ちや荷役、点検といった運転以外の時間もすべて含まれるという点です。走行距離を伸ばそうとするほど、荷待ちなどに使える時間の余裕は少なくなっていきます。
休息期間は継続11時間が基本、9時間を下回らない
勤務と勤務の間に確保する休息期間についても基準が引き上げられました。改正後は、継続11時間以上の休息を与えることを基本としたうえで、どうしても難しい場合でも継続9時間を下回ってはならないと定められています。長距離貨物運送に限っては、一定の条件のもとで継続8時間以上まで許容される特例も設けられていますが、あくまで例外的な扱いです。休息時間が伸びたということは、翌日に持ち越せる走行可能時間がそれだけ短くなったことを意味します。
月284時間・年3300時間という上限も押さえておく
拘束時間は1日単位だけでなく、月間・年間でも上限が設けられています。改正前は1か月293時間・1年3516時間でしたが、改正後は1か月284時間・1年3300時間へと縮小されました。日々の走行距離が法律違反ぎりぎりのラインでなくても、月間や年間の総量規制に引っかかってしまうケースがあるため、運送会社は日次だけでなく月次・年次でも管理する必要があります。
運転時間の規制から逆算する「実質的な走行距離」の目安

距離そのものの上限は決まっていないと述べましたが、運転時間の規制を平均速度に当てはめれば、現実的にどこまでの距離が走れるのかをおおまかに試算できます。ここからが、他の解説記事ではあまり触れられていない実務的な視点です。
運転時間は2日平均で1日9時間以内
運転時間そのものについては、2024年の改正でも変更されておらず、2日を平均して1日あたり9時間以内、2週間を平均して1週間あたり44時間以内という基準が維持されています。拘束時間13〜15時間のうち、実際にハンドルを握れる時間は最大でも9時間程度と考えておくのが安全です。残りの時間は荷積み・荷下ろし、点呼、休憩、荷待ちなどに費やされます。
連続運転は4時間まで、休憩は合計30分以上
連続運転時間は原則4時間までで、サービスエリアや駐車場が混雑していて休憩が取れない場合に限り、4時間30分まで延長できる例外があります。運転を中断する際は、1回おおむね10分以上、合計で30分以上の休憩を確保しなければなりません。つまり9時間走り続けることは制度上できず、必ずどこかで休憩を挟む前提での運転時間だという点を理解しておく必要があります。
平均速度から試算すると1日400〜550kmが現実的な上限
では、なぜ高速道路中心の長距離便で1日500キロ前後という数字がよく語られるのでしょうか。運転時間9時間という枠に、高速道路の法定速度や休憩時間を織り込んで試算すると、その理由が見えてきます。
- 高速道路中心(平均時速55〜60キロ想定):運転9時間で概算500〜540キロ程度
- 一般道中心(平均時速40キロ想定):運転9時間で概算350〜360キロ程度
- 荷待ち・荷役の時間が長い運行:拘束時間の制約が先に効き、走行距離はさらに短くなる
あくまで平均速度から逆算した概算値であり、渋滞や積雪などの道路状況、荷待ち時間の長さによって実際の数値は変動します。それでも、法律で決まっているのは距離ではなく時間であるという構造を理解していれば、案件ごとの走行可能距離を運行管理者自身で見積もれるようになります。
2024年4月の法改正とトラック速度規制緩和が走行距離に与えた影響

2024年4月には、拘束時間の短縮という規制強化と、高速道路の最高速度引き上げという規制緩和がほぼ同時に実施されました。一見すると逆方向の動きに見えますが、どちらも同じ2024年問題への対応として設計されています。
拘束時間の短縮で「稼げる距離」は縮小した
月284時間・年3300時間という上限は、改正前と比べて着実に短縮されています。1日あたりの走行可能な距離が大きく変わらなかったとしても、月間・年間で走れる総距離、ひいては1人あたりの運送量は縮小せざるを得ません。長距離輸送を主力にしてきた運送会社ほど、乗務員1人でカバーできる案件数が減り、増員や中継輸送といった体制の見直しを迫られています。
高速道路の最高速度引き上げ(80km→90km)の狙いと限界
2024年4月1日には、車両総重量8トン以上の中大型トラックを対象に、高速道路での法定最高速度が時速80キロから90キロへと引き上げられました。日本経済新聞の報道によると、この見直しは拘束時間の短縮によって輸送能力が落ち込むことを見越し、同じ運転時間でもより長い距離を走れるようにする狙いがあったとされています。ただし、車体の安全性能の関係でトレーラーは対象外とされ、時速80キロのまま据え置かれました。速度が上がったからといって連続運転4時間・休憩30分というルールが緩んだわけではなく、走行距離の底上げ効果には限りがあります。
現場で起きている運行計画の見直し
実際の現場では、これまで1人のドライバーが日帰りで担っていた長距離便を、中継地点でドライバーを交代する方式に切り替える動きが広がっています。走行距離を維持したまま拘束時間の規制を守るには、1人がすべてを走り切るのではなく、複数人で距離を分担する発想への転換が欠かせません。
改善基準告示に違反した場合の罰則とリスク
拘束時間や運転時間の上限を超えて走行距離を稼ごうとすると、思わぬ形でリスクが跳ね返ってきます。ここでは違反時に問われる責任の種類を整理します。
行政処分(トラックGメンによる是正指導・車両停止処分)
改善基準告示自体には罰則規定がありませんが、これを軽視した運行が常態化していると判断されれば、貨物自動車運送事業法に基づく行政処分の対象になります。国土交通省が配置する「トラックGメン」が荷主・元請け事業者への監視を強めており、違反が確認されれば車両停止処分や事業改善命令が下されることがあります。処分歴は運送会社の信頼性にも直結し、荷主からの取引継続にも影響しかねません。
労働基準法違反との違い
改善基準告示とは別に、労働基準法上の時間外労働の上限規制にも違反していると判断されれば、こちらは罰則付きの労働基準法違反として扱われます。走行距離を稼ぐために拘束時間や労働時間の記録を実態と異なる形で作成していた場合は、労働基準監督署の是正勧告や書類送検といったより重い対応につながる可能性があります。距離を優先するあまり時間管理がおろそかになれば、二重の法令違反リスクを抱えることになる点は覚えておく必要があります。
運送会社が走行距離と拘束時間を適正に管理する方法

時間規制の枠組みが分かったところで、実際に走行距離と拘束時間を両立させるための具体的な工夫を見ていきましょう。
デジタルタコグラフ・運行管理システムでの可視化
デジタルタコグラフを導入すれば、運転時間・休憩時間・走行距離を自動で記録でき、拘束時間の上限に近づいているドライバーを事前に把握できます。感覚的な運行計画から、データに基づいた計画への切り替えは、違反の未然防止だけでなく、余裕を持った案件の受注判断にもつながります。
荷待ち・荷役時間を含めた運行計画の見直し
拘束時間は運転だけでなく荷待ちや荷役の時間も含むため、走行距離を確保したいのであれば、まず荷待ち時間を削る発想が欠かせません。到着時刻の事前調整や、パレット化による荷役時間の短縮は、遠回りに見えて実は走行できる距離を伸ばす直接的な打ち手になります。
荷主との直接契約で無理な運行依頼を減らす
多重下請け構造の中では、実際の運行状況が見えにくいまま無理のある納期や距離を求められがちです。荷主企業と運送会社が直接つながることができれば、拘束時間や走行距離の制約について現場の実情を踏まえたうえで条件を調整しやすくなります。運送会社検索サイト「ハコプロ」は、荷主企業と運送会社の直接契約を後押しするサービスで、掲載は運送会社側は完全無料です。ドライバーの年齢や社歴、運送にかける想いを紹介する「ドライバー名鑑」機能を通じて、誰が荷物を運ぶのかを荷主企業に伝えられる点も特徴です。
トラックの走行距離と法律に関するよくある質問
ここまでの内容を踏まえ、走行距離と法律の関係についてよく寄せられる質問に回答します。
トラックの1日の走行距離に「〇〇キロまで」という法律上の上限はありますか
明文化された距離の上限はありません。国が定めているのは、拘束時間・運転時間・休息期間という時間の基準であり、走行距離はこれらの時間規制を守った結果として決まるものです。ただし平均速度から逆算すれば、おおむね1日400〜550キロ程度が現実的な目安になります。
1日500kmや600kmの運行は違法になりますか
距離だけを見て違法かどうかを判断することはできません。その距離を走った結果として、1日の拘束時間が15時間を超えていたか、連続運転時間の休憩ルールを守れていたかといった時間側の基準を満たしているかどうかで判断されます。高速道路中心で休憩を適切に取りながら走った500〜600キロと、渋滞や荷待ちを含んだうえでの同じ距離とでは、法令上の評価が変わってくる点に注意してください。
軽貨物ドライバーなど個人事業主にも改善基準告示は適用されますか
改善基準告示は労働基準法上の労働者を対象とした基準であるため、雇用契約を結ばない個人事業主には直接適用されません。もっとも、過労運転が事故につながるリスクは雇用形態にかかわらず変わらないため、個人事業主として活動するドライバーであっても、告示の基準を目安に自らの拘束時間や休息期間を管理することが安全確保の観点から推奨されています。
まとめ|適正な走行距離管理を、ハコプロで荷主との直接契約から
トラックの1日の走行距離そのものに法律上の上限はなく、規制の実体は拘束時間・運転時間・休息期間という時間の基準にあります。2024年4月の改善基準告示改正によって、1日の拘束時間は原則13時間・最大15時間に、休息期間は継続11時間を基本とする形に見直され、月284時間・年3300時間という総量規制も厳しくなりました。高速道路の最高速度引き上げは走行効率を補う施策ではあるものの、連続運転時間や休憩のルールを緩めるものではありません。距離を追いかける前に、まず時間の枠組みを正しく理解することが、法令順守と安全運行の両立につながります。
時間規制の中で無理のない走行距離を確保するためには、荷待ち時間の削減や中継輸送の導入に加えて、そもそも無理な運行を求められにくい取引関係を築くことも重要です。運送会社検索サイト「ハコプロ」では、荷主企業と運送会社の直接契約を通じて、中間マージンを介さない適正な運賃と、現場の実情を踏まえた運行条件の相談がしやすくなります。走行距離や拘束時間の管理に不安がある運送会社の方は、一度ハコプロへの掲載や相談を検討してみてください。


